米国ミシガン州に本社を置き、世界に約2万店舗を展開する宅配ピザチェーンのドミノ・ピザ(Domino's Pizza)。その日本法人、ドミノ・ピザ ジャパンが2033年の2000店舗達成に向け、攻めの人事施策に取り組んでいる。2023年11月に開催された「CIO/CISO Japan Summit」(主催:マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン・リミテッド)に、ドミノ・ピザ ジャパン HR部 部長の影山光博氏が登壇し、人事部門の立ち位置と“攻めの人事”施策について説明した。
2000店舗達成に向けデジタル化を推進
ドミノ・ピザ ジャパンは、13カ国のチェーン運営を統括するオーストラリアのドミノピザエンタープライズの傘下で宅配ピザ事業を営んでいる。1985年の日本進出から順調に成長を遂げ、2023年10月時点で国内約1000店舗を運営、2033年に2000店舗達成を目指している(写真1)。
近年の同社は生産性向上と店舗コスト削減を目的に、店舗運営にデジタルサービスの導入を進めている。例えば、店舗に設置した無線LANデバイス「Cisco Meraki」に搭載されたスマートカメラを使って、店舗内の状況把握やオペレーションの効率化を図っている。
また、宅配バイクの走行状況を把握するGPSシステム「Drivosity」を活用し、走行速度やカーブの仕方などを記録・管理し宅配スタッフの安全運転に役立てている。GPSシステムを導入する宅配チェーンは少なくないが、ドミノ・ピザでは「スタッフAは配達からの帰店が速いが、ある区間の速度が当社の規定を超えていた」といった些細な情報まで把握でき、迅速な指導につなげている。具体的なデータに基づいてスタッフの安全教育ができることで配達中の事故を減らしているという。
“慣習を打ち壊す”を人事ポリシーに適用
ドミノ・ピザ ジャパン HR部で部長を務める影山光博氏(写真2)は、同社のパーパス&バリューの1つ「慣習を打ち壊す(Crash Convention)」を挙げ、それに基づいた各種の人事・人材施策を紹介した。
例えば、同社では「年1回、個人の業務目標を立てて、個人ごとに評価する」といったよくある人事評価を行わないという。では、どのような評価を用いるのか。影山氏が挙げたのは以下の3つのHRポリシーだ。
●Pay for Job:性別、能力、経験年数などではなく、ジョブポジションに対して報酬を決める。ポジション自体のレベルを上げることが報酬アップとなる。
●No Rating:本社・店舗共に、個人に対してA、B、Cといった評価ランクをつけない。
●One Team/Profit Sharing:仕事は“団体戦”であり、人事評価において個人の目標設定は行わず、チームで目標設定を行う。OKR(Objectives and Key Results、注1)フレームワークを用いてチームで取り組み、組織全体で得た利益は各人のポジションに基づいて還元する。
影山氏は、こういった型破りな人事ポリシーを掲げる背景として、個人評価を年1回行う形式では現在のビジネススピードに追い付けないことを挙げる。「チームごとにスピード感のある評価制度を導入し、組織全体で達成した目標、利益に対して、報酬の還元を行っている」という。
注1:OKR(Objectives and Key Results、目標と主要な結果)は、従来手法に比べて高頻度で設定、追跡、再評価を行う目標管理のフレームワーク。企業、部門、チーム、個人という階層ごとに設定し、企業全体で同じ課題に取り組む。1970年代に米インテルが導入した。
●Next:IT部門と人事部門が手を組む、ドミノ・ピザのユニークな取り組み
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