BIPROGYは2024年3月29日、建物の設備管理をデジタルツインで行うための空間データ作成・AI活用の実証実験をリコーと実施したと発表した。リコーの「空間データ作成・利活用AIソリューション」とBIPROGYの「Archibus」を接続し、台帳連動型のデジタルツインの構築を検証した。BIPROGYは今後、建物のオーナーや管理会社がデジタルツインで建物設備の状態や修繕履歴などを把握して、迅速に情報を共有できるサービスを開発する。
BIPROGYは、米Archibus(アーキバス)が開発・提供する、建物の設備管理全体の可視化システム「Archibus」を2018年から販売している。今回、リコーの「空間データ作成・利活用AIソリューション」およびAI画像認識技術をArchibusと組み合わせた、設備管理業務分野におけるデジタルツイン構築の実証実験を行った。
「老朽化した社会インフラのメンテナンスにおいて、建物における設備管理業務の効率化や熟練技術者の継承者不足が課題になっている。近年、サイバー空間に現実空間の環境を再現するデジタルツインへの期待が高まっているが、既存の建物の多くはその作成に不可欠な建物の3Dデータを持たず、活用が進んでいない」(BIPROGY)
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実証実験では、建物を360度カメラと3Dレーザースキャナーで撮影し、デジタルツインで閲覧可能なデジタル建物(3Dデータ)を作成(画面1)。デジタル建物上に存在する設備をAI画像認識で検出し、各設備の台帳情報と建物管理用の3D/BIM(Building Information Modeling)データを紐付ける。3Dビューアのデータを、Archibusに取り込むBIMデータとして整備している(画面2)。
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リコーの空間データ作成・利活用AIソリューションは、BIMや図面などが存在しない既存の建物・設備・配管などもバーチャル空間として再現する。現地に行かずに、PC/タブレットから空間を閲覧し、測距、メモやコメントによる記録、既存台帳システムとの連携、AIによる業務自動化・作業支援などを可能ににする。
一方のArchibusは、企業の不動産ポートフォリオ、オフィススペース、インフラ施設の管理などを支援するソフトウェア。建物管理やワークプレイス管理、ファシリティ管理関連のデータを単一のデータベースで管理し、土地、建物、建築物、設備などの管理と運営に関わる全情報を可視化する。
BIPROGYは今後、デジタルツイン上でタイムリーに情報を共有できるサービスを開発する。また、台帳と連動したデジタルツインを効率よく構築できる方法の確立を目指す。「建物における維持管理業務が熟練技術者の暗黙知に基づく属人化した管理になっている」(同社)問題に対処する。