日本シノプシスは2024年4月17日、同社がグローバルで監査を請け負ったユーザーの実例をベースに、2023年におけるオープンソースソフトウェア(OSS)の利用状況と、OSSに含まれるセキュリティ脆弱性の現状を報告した。これによると、リスク評価を行ったアプリケーションの74%に高リスクの脆弱性を含むOSS部品が使われていた。前年調査の48%から26ポイント増えている。同社は2024年4月25日に、OSSの利用状況/脆弱性調査ツール「Black Duck」の上位エディションとして、ソフトウェアサプライチェーンで混入するOSSの調査機能を強化した「Supply Chain Edition」をリリースする。
米シノプシス(Synopsys)日本法人の日本シノプシスは、オープンソースソフトウェア(OSS)の利用状況/脆弱性調査ツール「Black Duck」と監査サービスを提供している。ユーザーが開発したアプリケーションに含まれるOSSのコードを特定し、OSSに既知のセキュリティ脆弱性が残っているかを調べられる。
今回、同社がグローバルで2023年に監査を請け負ったユーザーの実例からOSSの利用状況と脆弱性の現状をまとめた年次レポート「2024オープンソース・セキュリティ&リスク分析(OSSRA:Open Source Security and Risk Analysis)レポート」の内容を発表した(関連記事:企業が持つソフトウェアの84%に脆弱性、日本シノプシスがオープンソースのリスク分析を報告)。
「高リスク脆弱性を含む」が74%、前年から26ポイント増加
レポートによると、2023年に調査したアプリケーションは17業種1067件。このうちOSSを含んだアプリケーションの割合は96%で「高止まりしている」(同社)。全コードに占めるOSSの割合は77%である(図1)。
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少なくとも1つのオープンソース脆弱性が見つかった割合は、前年と同じ84%だった。一方、高リスクの脆弱性(積極的に悪用されている、PoCのエクスプロイトが公開されている、リモートコード実行の脆弱性として分類されている、など)を含むアプリケーションの割合は前年の48%から74%に急増した。同社はその理由について「経済不安に伴う技術者の解雇などによって、脆弱性のパッチを適用するリソースが減った」ことを挙げている。
高リスクのオープンソース脆弱性を含む割合が業種別で最も高かったのは、コンピュータハードウェアおよび半導体の業界で88%に上った。製造、産業機器、ロボットの業界が87%で続いている。また、ビッグデータ、AI、BI、マシンラーニング(機械学習)の業界は66%だった。宇宙、航空、自動車、運輸、物流の業界は最も少ないが、それでもアプリケーションの33%に高リスクの脆弱性が含まれていた。
運用面では、古いバージョンのOSSを使い続けるユーザーが多い。アプリケーションの91%は10バージョン以上古いOSS部品を含んでいる。また、コードベースのほぼ半数(49%)は過去2年間に新たな開発活動実績のないOSS部品を含んでいた。また、アプリケーションに含まれる脆弱性は公開から平均して2.5年以上経ったものであり、4分の1近くのアプリケーションには10年以上前から存在する脆弱性が含まれていたという。
また、約3分の2(66.8%)の組織は、使用中のアプリケーションに重大な脆弱性が見つかった際に、パッチの適用まで2週間以上かかっている。これに対して、報告される脆弱性のうち半分以上は、公開後1週間以内に悪用されていることが分かっている(図2)。
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