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「エンジニアが単純作業で疲弊しない環境整備を」─成功事例に学ぶシステム開発領域の自動化

ハイパーオートメーション実現への道筋

2024年6月26日(水)愛甲 峻(IT Leaders編集部)

環境の変化に対応してビジネスを発展させていくために、素早く質の高いシステム開発を実現する──このことは多くの企業によって急務の課題となっている。2024年4月18日開催のIT Leaders Tech Strategy LIVE「[ハイパーオートメーション]実現への道筋 “自動化の連なり”が導く業務改革と新しい働き方」(主催:インプレス IT Leaders)に、フュージョンブリッジテクノロジーズCEOで元オーケー 執行役員 IT本部 本部長の田中覚氏が登壇。これまでのシステム開発経験から、自動化を組み込み、品質の担保と迅速さを両立した開発体制構築の経緯や得られた成果を解説した。

 ビジネス環境の急速な変化に追随するために、企業のシステム/アプリケーション開発には迅速さや高い効率が求められている。ITエンジニア不足も顕在化する中で、システム開発の自動化は多くの企業が求める共通課題と言ってよいだろう。

 「素早く、高品質なシステム開発のニーズは確実に高まっています」と、フュージョンブリッジテクノロジーズ CEOの田中覚氏(写真1)は話す。同氏はこれまで、回転寿司チェーン大手のあきんどスシローで情報システム部長、ディスカウントスーパーマーケットのオーケーでIT本部 本部長とITの統括役を歴任してきた。今回は、これまでの経験から、システム開発の自動化に至った経緯や実践方法を解説した。

写真1:フュージョンブリッジテクノロジーズ CEOの田中覚氏

システム開発自動化の狙いとポイント

 システム開発自動化の狙いとしてすぐに思いつくのは、開発期間の短縮と、それによる人件費などのコスト削減だろう。それらに加えて田中氏が強調したのは、品質の確保だ。例えば、システムのリリース後に起こった障害に対応する中でデグレード(修正した際にそれまで正常に動作していた機能が動作しなくなること)が発生するケースがある。そうした障害に心当たりがない場合に、原因究明に多大な労力を要した経験から、特にテストの自動化を重要視したという。

 開発に携わるメンバーのモチベーションの維持も狙いの1つ。繰り返しや単純作業が多いテストなどの作業は、サービス提供の観点では重要だが、エンジニアにとっては意欲的に取り組むのが難しい。そのような単純作業を自動化することで、エンジニアのやる気を損なわずに開発を進められるという。

 ただし、自動化に漫然と取り組んでも上述のような成果には結びつかないことは明らかだ。田中氏は自動化の成否を分けるポイントとして、一部ではなくプロセス全体を自動化の対象とするための「適切なテクノロジーの選択」、テクノロジーを活用する「メンバーのマインドチェンジ」、先を見据えての「高い初期コストを投じる覚悟」の3点を挙げた。

基幹システムリプレースの肝は「データハブ」

 田中氏がシステム開発の自動化に取り組んだきっかけは、基幹システムのリプレースだ。オンプレミス環境のシステムが老朽化。アーキテクチャが古く、ビジネスの成長に対して拡張性が限界を迎えていたところに、今後のサプライチェーン改革やリージョン拡大に向けたシステムの見直しも必要となり、更改に踏み切ることとなった。

 リプレースの方針として、まずはシステムのモダナイゼーションに注力し、その先のBPR(Business Process Re-engineering)とは切り離すことを決定。同時に、今後の改善がしやすいアーキテクチャにすることを考えた。

 開発の難易度を下げながら拡張性を高め、将来のBPRにも備えるための工夫が「データハブ」だ(図1)。旧システムでは品目や形態が異なる多数の製品を管理するために、複数のサブシステムやサブファンクション同士が絡み合い複雑化していたという。

 そこで、サブシステム/サブファンクション群をすべて独立させ、データハブと疎結合する構成をとった。データハブにマスターデータ/トランザクションデータを集約するようにし、データマネジメントの高度化も図った(関連記事BigQuery導入やデータハブ構築などで、全社データマネジメントのギアを上げる─オーケー)。

図1:データハブのコンセプト(出典:フュージョンブリッジテクノロジーズ)
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 日々の業務を遂行しながら安全にリプレースするために、システムのリリースは新旧システムを一括で入れ替えるビッグバン方式ではなく、両者を並行稼働させ、段階的に進める方法を採用。上述のデータハブは各システムの緩衝材として機能する形だ。

 システムをモダナイゼーションするにあたり、データベースやストレージはクラウドベンダーのマネージドサービスを採用し、クラウドネイティブ化を志向。また、各機能を切り分けてマイクロサービス化することで拡張性や信頼性を高め、デプロイメントを容易にした。運用面では、それぞれ分かれていた開発チームと運用チームを一体化し、DevOpsのアプローチに移行したという。

●Next:自動化を組み込んだCI/CDパイプラインを構築、単純作業で疲弊しない環境へ

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