[調査・レポート]

日本企業のIT人材不足が深刻化、新技術のみならず基幹システムを担う人材も足りず─ガートナー

2024年8月2日(金)IT Leaders編集部

ガートナージャパンは2024年8月1日、日本企業のIT人材に関する調査結果を発表した。人材・組織における課題の上位3位を尋ねたところ「質的な人材不足」の回答が31.9%で最多だった。選択肢に挙げた13種類の人材のいずれにおいても不足している状況が明らかになった。

 ガートナージャパンは、2024年4月に実施した日本企業のIT人材に関する調査結果を発表した。調査は、年間売上高500億円以上の日本企業で、ITやデジタルの戦略策定に携わる役職者を対象に実施した。

図1:日本企業における人材不足の状況(出典:ガートナージャパン)
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 人材・組織の課題に関して複数回答で聞いたところ、「質的な人材不足」を1位に選んだ回答者は14.5%、3位までに選んだ回答者の合計は31.9%と、どの選択肢よりも多かった。さらに、どのような人材がどの程度不足しているかを尋ねると、選択肢に挙げた13種類の人材のいずれにおいても不足している状況が明らかになった(図1)。

 この結果を受けてガートナーは、「4割前後の日本企業において、13種類の人材のいずれもが大いに不足している。多少の不足まで含めると、いずれも8割を超えている。デジタルトランスフォーメーションやクラウド、AIといった比較的新しい技術に対応する人材だけでなく、基幹系システムなど旧来のITに対応する人材でさえ不足している」と指摘する。

 現在取り組んでいる人材不足への対応策はどうか。複数回答で聞いたところ、中途採用の積極化(47.3%)、インターン制度の活用(31.8%)、働き方改革の促進(31.0%)、新卒採用における条件の改善(30.8%)が上位に入った。

 このほかの対応策としては、退職者を再雇用するアルムナイ採用も23.8%が取り組んでいた。また、福利厚生の充実(23.5%)、柔軟な報酬体系の導入(19.3%)など、採用だけでなく既存人材のエンゲージメント向上による離職防止につながる回答も見られた。

 図2は、人材の定着率やエンゲージメント向上のための施策について採用状況を尋ねた結果だ。フレキシブルな勤務時間(59.1%)やリモートワーク(58.8%)が半数を超えていた。「副業を解禁している企業も35.5%あり、日本企業における働き方の自由度は近年相当高くなっていることがうかがえる」(ガートナー)。

 さらに、週休3日制を21.1%が採用しており、12カ月以内に採用予定という回答の割合も18.8%に上った。「今回の調査結果に限れば、1年後には日本企業の約4割が週休3日制を採用していることになる」(同社)。

図2:定着率やエンゲージメント向上の施策(出典:ガートナージャパン)
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 今回の調査結果から、ガートナーは、「デジタルやAIに関するIT人材需要が増加傾向にあるのに対し、供給される人材は減少傾向にあるため、IT人材不足が将来ますます深刻化する」と見ている。同社シニア ディレクター アナリストの一志達也氏は、企業の人事部門および当該事業部門の採用担当者に向けて、次のように助言している。

 「IT人材には専門性の高い技術的なスキルに加えて、理解力やコミュニケーション力などのソフトスキルも求められる。さらに、データ分析やAIなどの台頭で、ITの多様化も進んでいる。こうした人材を惹きつけるために、企業は自社のブランディングに取り組む必要がある。新卒一括採用の一部をIT人材にするのでは、先進的な企業に追いつけないばかりか、ますます取り残されることになる。IT部門は独自のキャリアパスや処遇を整備し、IT専門人材に向けたブランディングで自社の魅力を伝え、必要な能力を備えた人材を獲得する努力が必要だ」

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