[市場動向]
NEC、倉庫・工場の自動搬送ロボットを安定稼働させる無線通信技術を開発
2024年9月9日(月)IT Leaders編集部
NECは2024年9月6日、倉庫・工場で自動搬送ロボット(AGV)を安定稼働させる無線通信技術を開発したと発表した。遮蔽物や移動の影響で無線通信の品質が低下した際に、最も遅延が少ない無線ネットワークに切り替えることでAGVの停止や不安定な稼働を回避する。映像データよりも制御データを優先して送るといった制御も行う。2024年度中に実際の倉庫で実証実験を行い、2025年度の実用化を目指す。
NECは、倉庫・工場で自動搬送ロボット(AGV)を安定稼働させる無線通信技術を開発した。遮蔽物や移動の影響で無線通信の品質が低下した際に、遅延が少ない無線ネットワークに切り替える。映像データよりも制御データを優先して送るといった制御も行う。2024年度中に実際の倉庫で実証実験を行い、2025年度の実用化を目指す(図1)。
拡大画像表示
AGVには自律的に稼働するものと、遠隔地やクラウド上のサーバーから制御するものがある。遠隔制御の場合、現場の無線ネットワークを通じてAGVの状態認識および制御データの配信、搭載カメラで撮影した周辺映像の配信などを行っている。
現場の無線ネットワークは、柱・壁・設備などの遮蔽物や移動の影響で通信品質が低下し、円滑な制御に必要な通信の遅延要件を超過することがある。また、映像データや制御データなどの通信トラフィックが混在し、無線リソースの競合(順番待ち)が発生することで、通信遅延が変動することがある。
「こうした無線通信の品質低下が、AGVの稼働停止や状態認識・制御の不安定化を引き起こす。複数の無線ネットワークを使ってネットワークにつながりやすい環境を構築することである程度は防げるが、通信量が増大しアクセスが集中(輻輳)すると、通信の断絶や遅延が発生して制御が不安定になる」(NEC)。
NECは、これらの課題を解決すべく2つの技術を開発した(図2)。
拡大画像表示
1つは、通信の状態をパケット単位でリアルタイムに分析し、変動する通信品質を予測し、そのうえで最も遅延が少ない無線ネットワークに切り替える技術である。これにより、品質の良いネットワークに接続し続けることができ、通信遅延を抑えてAGV制御における通信の遅延要件の超過を避けることで、稼働停止を回避する。
もう1つは、データの内容や通信性能の要件(帯域、通信遅延、遅延の変動など)に応じてデータの送信タイミングを調整する、通信トラフィックの制御技術である。これにより、映像データはAGVの稼働に影響のない範囲で遅延を許容しつつ、制御データは優先して送ることでAGVの安定稼働を実現する。