[事例ニュース]
オリックス生命、開発テストをAIで自動化、250分要した工程が30分に
2024年10月25日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)
オリックス生命保険(本社:東京都千代田区)が、契約者向けWebサイトの開発業務効率化にAIを駆使しながら取り組んでいる。AIを活用したノーコード型テスト自動化ツールを提供するオーティファイが2024年10月17日に開催した情報共有会に、オリックス生命保険 ITプロダクトマネジメント部 上級アプリケーションデザイナーの松井康浩氏が登壇し、取り組みを紹介した。
システム開発の3分の1を占めるテスト工程
2018年9月に経済産業省のDXレポートが警告した「2025年の崖」はもはや目前。しかしながら、自社のIT人材やシステム開発スキルの不足から、レガシーシステムの残存による機会損失といった課題を抱える企業はまだまだ多い。
AIを活用したノーコード型テスト自動化ツールを提供するオーティファイのCEO、近澤良氏(写真1)は、「システム開発工数のうちテスト工程が33%を占めている」というIPAの調査を引用。このこともIT部門にとって負荷、ハードルとなっているという。同社はこうした課題を解決する一助として、ソフトウェア開発テストの領域に、進化著しいAIを活用することを提案している。
「繰り返しの作業が多いテスト工程はAIや自動化との相性がよい。この領域を自動化することで空いたリソースを、レガシーシステムの刷新や非IT人材による市民開発、アジャイルによる短期スパンの開発などに振り向けることができる」(近澤氏)
AIを用いたテスト自動化のアプローチに着目
そんなAIを用いた開発テストの自動化に、オリックス生命保険のIT部門が臨んでいる。同社では、システム開発の品質向上に寄与する活動として、テスト自動化と、開発チーム/テストチームの分離に取り組み続けてきた。その中で、ITプロダクトマネジメント部 上級アプリケーションデザイナーの松井康浩氏(写真2)は、テスト自動化プロジェクトのプロジェクトマネジャーを務めている。
オリックス生命が保険契約者向けに提供しているサービスでは、入院や手術をした際に給付金の請求、住所変更などをWebから行うことができる(図1)。 「保険加入後、保険会社との次の接点は、入院や手術などで心身共に疲れているタイミングが多い。そういった際に使っていただくシステムが、サイトの不具合で手続きがスムーズにできないようでは困る。実際に過去には本番障害を出した経験もあり、機能テストの自動化を強く進める機運につながった」(松井氏)
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テスト自動化に取り組む以前はPC、タブレット、スマートフォンといった実機を用意して、全部、スタッフの手作業でテストを行っていた。5年ほど前に行った社内調査では、開発における工程の50%をテスト工程が占めていたという。
同社では、2020年頃からオーティファイとは別のベンダーの自動化ツールを導入し、まずは繰り返し実施するリグレッションテスト(回帰テスト)から始めた。2022年からはオーティファイのテスト自動化クラウドサービス「Autify」を導入し、マルチブラウザテストを自動化。スマートフォンやタブレットにおける手動の実施テストは操作確認のみとなった。
テスト自動化導入後は、従来手動テストで行っていたスマートフォンのテスト工程に要する時間は250分から30分まで短縮された(図2)。「初めに実行用のシナリオを作っておく必要はあるが、スタートすると自動的に操作が進み、人間は最後の結果のみの確認でテストが完了する。これはスマートフォンのテストにおける成果としての数値だが、社内の代表的なシステムにも横展開で広げていく」(松井氏)
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現在は週1回のペースでスマートフォンのテストを実施する(図3)。土・日曜日にiPhone、Androidスマートフォンのテストを実施し、エビデンスの保存まで行う。社員は、月曜日出社後テストの完了を確認し、必要に応じてシナリオのメンテナンスをする。
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