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リアルタイムなCAEシミュレーション/デジタルツイン環境を可能にする「NVIDIA Omniverse Blueprint」
2024年11月19日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)
米NVIDIAは2024年11月18日、CAEソフトウェアライブラリ群「NVIDIA Omniverse Blueprint」を発表した。GPUライブラリや物理演算AIソフトなどを含んだリファレンスとして提供し、航空宇宙、自動車、製造、エネルギーなどのCAE開発者向けにリアルタイムのインタラクティブ性を備えたデジタルツインの設計支援環境を構築可能にする。開発者は、Blueprintの一部または全体を、流体シミュレーションなどの既存のCAEソフトに統合して利用する。これにより、物理シミュレーションを高速化し、シミュレーション結果をリアルタイムに可視化できるようになる。
米NVIDIAの「NVIDIA Omniverse Blueprint」は、CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)アプリケーションに組み込むためのソフトウェアライブラリである。航空宇宙、自動車、製造、エネルギーなどのCAE開発者向けにリアルタイムのインタラクティブ性を備えたデジタルツインの設計支援環境を構築可能にする。
ソルバーを高速化するGPUライブラリ「CUDA-X」、物理演算AIフレームワーク「NVIDIA Modulus」、シミュレーション結果を可視化するグラフィックス描画APIなどで構成し、これらをリファレンスとして提供する。
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ソフトウェア開発者は、Omniverse Blueprintの一部または全体を、流体シミュレーションなど既存のCAEソフトウェアに組み込んで利用する。これにより、物理シミュレーションを高速化し、シミュレーション結果をリアルタイムに可視化できるようになる(画面1)。
Omniverse Blueprintの最初の応用例の1つとして、数値流体力学(CFD)シミュレーションを挙げている。CFDは自動車や航空機などの設計を仮想的にテスト・改良するうえで重要だが、従来のCAEアプリケーションでは物理シミュレーションから可視化、設計最適化まで数週間から数カ月かかることもあったという。
CAEベンダー各社が採用、シミュレーションを高速化
Omniverse Blueprintのファーストユーザーは米アンシス(Ansys)である。流体解析ソフトウェア「Ansys Fluent」に適用し、流体力学シミュレーションを高速化した。320基のGPU「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」で、25億セルの自動車シミュレーションを6時間強で完了した。仮に2048基のx86CPUコアで実行した場合、ほぼ1カ月かかる処理だという(関連記事:製造設計から倉庫ロボット、火星探査まで─アンシスが示すAI時代のエンジニアリング革新)。
CAEアプリケーションを開発している米Luminary Cloudも、Omniverse Blueprintに含まれるNVIDIA Modulusを用いてAIモデルを構築した。CFD(計算流体力学)ソルバーが生成した学習データに基づいて気流場と自動車の形状の関係を学習した。このAIモデルは高速にシミュレーションを実行し、リアルタイムに空気力学的フローシミュレーションを視覚化するとしている。
Luminary Cloudは、米NVIDIAと共に2024年11月17日~22日(米国時間)に米アトランタで開催される「Supercomputing 2024(SC24)」において「仮想風洞」のデモを行う。この仮想風洞では、トンネル内で車両モデルを変更する場合でも、ユーザーがリアルタイムかつインタラクティブに流体力学のシミュレーションを行い、視覚化できるという。
このほか、Altair、Beyond Math、Cadence、Hexagon、Neural Concept、Siemens、SimScale、Trane Technologiesなども自社のCAEアプリケーションにOmniverse Blueprintを組み込むことを検討しているという。