[市場動向]

日立、シリコン量子コンピュータの実用化加速、2027年に試作機をクラウド提供

2025年10月2日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)

日立製作所は2025年10月2日、シリコン量子コンピュータの実用化に向けて、理化学研究所およびimecとの間で基本合意書(MOU)を締結したと発表した。2027年までに、シリコン量子コンピュータの試作機を開発し、開発者や研究者に向けてクラウドで公開する。

 日立製作所は、大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発を、理化学研究所(理研)と進めてきた。半導体の国際共同研究機関であるimecとも連携してきた。今回、各国の研究拠点や人材を活用した研究開発ネットワークの構築に向けた基本合意書(MOU)を3者間で締結した(図1)。

図1:シリコン量子コンピュータの実用化に向けた基本合意の概要(出典:日立製作所)
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 量子コンピュータの大規模化と安定動作のため、理研が持つシリコンスピン制御技術と、imecが持つ半導体微細加工設備やプロセス技術を組み合わせ、量子ビットの高精度制御と大規模集積化を同時に実現する(写真1)。さらに、日立のインテグレーション技術を活用し、シリコン量子コンピュータの実用化と新産業の創出を目指す。

写真1:シリコン量子コンピュータのチップ(出典:日立製作所)
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 日立は、開発者や研究者が参加するための研究開発基盤として、2027年までにシリコン量子コンピュータの試作機をクラウドに公開する(図2)。インターネットを経由して量子ビットを実際に操作できるようにする。2028年には100量子ビット、2030年には1000量子ビットの試作機を開発する予定である。

図2:シリコン量子コンピュータ試作機をクラウドに公開する取り組みの概要(出典:日立製作所)
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 現在、複数の方式で量子コンピュータの開発が進んでいる(図3)。日立が研究開発を進めるシリコン量子コンピュータは、半導体技術を活用し、量子ビットをシリコン基板上に集積する。成熟技術の半導体技術を活用できるため、量子ビットの大規模集積化に有利だとしている。

図3:量子コンピュータが量子ビットを実現する各種の方法(出典:日立製作所)
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 一方、シリコン量子コンピュータは、単一電子を高精度で制御する量子ビット操作方式の確立や、高純度シリコン同位体を使用した製造プロセス最適化など、実用化に向けた課題も残る。実用化には、異なる強みを持つ国内外の研究機関や企業の連携が不可欠だとしている。

 なお、日立は、CMOS半導体の上に疑似的に量子アニーニングを再現した「CMOSアニーリング」のクラウドサービスを2022年から提供している(関連記事日立、疑似量子コンピュータ「CMOSアニーリング」のクラウドサービスを提供)。

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