プラットフォーム プラットフォーム記事一覧へ

[技術解説]

エンタープライズサーチ─企業内検索に求められるものとは?

2007年6月25日(月)IT Leaders編集部

企業内における情報発信の活性化や知識共有を促進させるソリューションとして注目される社内ブログ(Blog)や社内SNSの活用は、先進企業を中心に広まりつつある。しかし、発信された情報を常に網羅的にキャッチアップしていくことは困難であり、発信された情報を効率よく収集し、選別していく何らかの仕組みが求められるだろう。エンタープライズサーチは、まさにそうしたニーズに応えるものであると同時に、社内に蓄積された「知」の共有と再利用に大きく貢献するソリューションである。ここでは、エンタープライズサーチの必要性、各社の具体的な製品を読み解くためのポイント、代表的な製品の特徴などを紹介し、企業内検索に求められる要素を浮き彫りにしていく。

エンタープライズサーチとは?

普段、インターネットを利用していながら、GoogleやYahoo!に代表されるサーチエンジンサービスを利用したことがないという人は、まずいないだろう。インターネット上に存在するであろう未知の情報を検索するために、こうしたサービスを利用することは、もはや当たり前の手段として定着しつつある。ところが、この「できて当たり前」のことが、社内の情報に対しては「できない」のである。

企業内における情報の蓄積と検索をスマートに実現する手段として、古くからデータベースが活用されている。データベースは、利用目的に応じてあらかじめフィールドが決められており、レコードに収められる情報は定型化されている。社内に蓄積されている情報が、すべてデータベース化されていれば、検索性も担保される。しかし、一説には、企業内の文書の約8割が非定型であると言われている。こうした非定型文書の検索を可能にしなければ、社内の知識共有は実現しえない。

たとえば、プレゼン資料を作成するとしよう。過去に、類似のプレゼンを行った人がいれば、そのときに使用した有益な調査結果が、どこかのファイルサーバー上に、ひっそりと眠っている可能性がある。それを見つけることができれば、イチから資料を作成する必要はない。しかし、Excelのワークシートなのか、PowerPointのスライドなのか、PDFなのかもわからず、誰が作成したのかもわからない。それどころか、本当にあるのかどうかすらわからない。いったい、これをどうやって探し出せばよいのだろうか。

これは、経営層にとっても決して見過ごすことができない重要な問題である。経営改革を効率よく進めていくためには、部門を越え、データベースを横断的に検索し、全社規模の情報を常に把握しておく必要がある。ところが、各部門で異なるDBMS(データベース管理システム)を採用しているために、一元的な検索ができないケースがある。セクショナリズムの結果であったり、企業合併の結果であったりと、理由はさまざまだが、社内に異なるシステムが混在している例は意外と多い。

さらに、企業のコンプライアンス(法令順守)の徹底や、コーポレートガバナンス(企業の内部統制)が求められる昨今、全社レベルでの知識共有の実現は、緊急課題であるといっても過言ではない。

こうした諸問題を解決するために、企業内に散らばる定型/非定型の情報を一元的に検索し、ひいては、社内における知の共有を一段進め、業務効率の改善や、新規ビジネスの創出、経営改革などに役立てていくためのソリューションが、企業内検索、すなわちエンタープライズサーチなのである。

また、最近では、エンタープライズ2.0の認識が高まりつつあり、先進企業を中心に、社内Blogや社内SNSによる情報発信も盛んだ。こうした情報を漏れなくキャッチアップして活用するためにも、エンタープライズサーチは欠かすことができない。

現在、エンタープライズサーチを実現するための製品が、さまざまなソフトウェアベンダーから提供されている。どのような製品があるのかを、表にまとめたので、参照してほしい。

エンタープライズサーチ製品を読み解くためのポイント1

エンタープライズサーチとして提供される製品の検索機能は、GoogleやYahoo!のようなインターネット上で提供される検索エンジンサービスと、どこが違うのだろうか。実は、サービスを利用するユーザー側から見れば、どちらもほとんど変わらない。探し出したい情報のキーワードを入力することで検索が行われ、一致した結果がリストとして表示される。リストから目的のものを選べば、オリジナルの情報にアクセスできるという点も同じだ。ユーザーインターフェイスについても、単一目的のWebページで提供されるケースや、デスクトップアプリケーションで提供されるケースなど、製品ごとに違いはあるものの、インターネット上のサービスと特に違いはない。Web2.0にならい、EIP(Enterprise Information Portal)にマッシュアップされ提供されるケースも多い。唯一、検索対象が、インターネット上の情報ではなく、企業内ネットワーク上の情報である点が両者の大きな違いだ。

もちろん、これはユーザー側から見た場合であり、内部処理は、さまざまな点で異なっている。そうした内部処理の技術的な側面については、別の機会に改めて紹介することにして、ここでは、各社が提供する製品の特徴を読み解くためのポイントを紹介する。

提供形態

一口にエンタープライズサーチのための製品と言っても、検索機能のみを提供するものもあれば、グループウェアやナレッジベース構築ソフトウェアの中の一機能として提供されるものもあるなど、その形態はさまざまだ。また、開発元からパッケージソフトウェアとして提供されるものもあれば、Google検索アプライアンスのように、特定の目的に特化した専用サーバーコンピューター(アプライアンスサーバー)として、ハードウェアごと提供されるものもある。そのほか、リアルコムKnowledgeMarket EnterpriseSuiteのように、パッケージソフトウェアでの提供以外に、ASPによる提供形態が用意されているものもある。

検索語の指定方法と類義語検索

どのような検索語の指定方法をサポートしているかは、サーチエンジンの根幹にかかわるテーマである。たとえば、完全に一致する語句しか検索しないのか、それとも、あいまいな語句や話し言葉のような文を指定しても、目指す検索結果が得られるのかなど、検索の方法にも種類がある。たとえば、「ビジョン」と「ヴィジョン」、「売り上げ」や「売上げ」のような表記の揺れを、同一の語句とみなしてくれない場合、検索語のわずかな違いのために、探している情報に行き当たらないこともありうる。

検索エンジンは、効率的な検索を行うために、あらかじめ索引を作成しており、この索引の見出し語の良し悪しが、検索結果のヒット率を左右することになる。索引作成には 「形態素解析」と「N-gram方式」という大きく二つの方法があり、形態素解析では、索引作成時の語句の切り出しに辞書データベースを使用するが、N-gram方式では、辞書を持たず、N文字で区切った文字の集まりを語句とみなして索引作成を行うなどの違いがある。また、前者は、類義語検索のために辞書メインテナンスが必要だが、後者は不要だ。ただし、後者は索引が大きくなるなど、それぞれに長短がある。

サーチエンジンの利用が社内に限定されるのであれば、検索語の指定方法について、スタッフを教育することも可能だが、サポート情報を顧客や潜在顧客に公開するなど、不特定多数のユーザーが利用する場合には、さまざまな検索語の指定方法に対応できる仕組みが必要になるだろう。

検索対象ファイルのサポート範囲

インターネット上のサーチエンジンサービスでは、主にHTMLやPDFを検索の対象としているのに対し、エンタープライズサーチでは、前述のようなニーズから、さまざまな種類の情報を検索対象にしている。たとえば、Microsoft Officeのようなデスクトップアプリケーションの文書ファイルや、Oracle 10gのようなDBMS用のデータベース、イントラネット上のHTMLやPDF、Lotus Notesのようなグループウェアの共有情報などだ。ただし、具体的にどのような文書形式に対応しているかは、製品ごとに異なる。社内文書の保管にPDFではなく、DocWorksを利用しているのであれば、DocWorksの文書ファイルを検索対象としてサポートしている製品を選ぶ必要があるだろう。データベースの対応などは、オプションで提供されるケースもあるので、特に留意しておきたい。

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
  • 3
関連キーワード

ジャストシステム / Google / リアルコム / 日立製作所 / Autonomy / Oracle / エンタープライズ検索 / アクセラテクノロジ

関連記事

トピックス

[Sponsored]

エンタープライズサーチ─企業内検索に求められるものとは?企業内における情報発信の活性化や知識共有を促進させるソリューションとして注目される社内ブログ(Blog)や社内SNSの活用は、先進企業を中心に広まりつつある。しかし、発信された情報を常に網羅的にキャッチアップしていくことは困難であり、発信された情報を効率よく収集し、選別していく何らかの仕組みが求められるだろう。エンタープライズサーチは、まさにそうしたニーズに応えるものであると同時に、社内に蓄積された「知」の共有と再利用に大きく貢献するソリューションである。ここでは、エンタープライズサーチの必要性、各社の具体的な製品を読み解くためのポイント、代表的な製品の特徴などを紹介し、企業内検索に求められる要素を浮き彫りにしていく。

PAGE TOP