たまに、仕事で壁に突き当たって落ち込むことがあります。新規案件に社内の理解や協力がなかなか得られない、なんて場面です。そんなときは、相田みつを氏の詩集「にんげんだもの」を開きます。この詩集には我々が普段は口に出さない思いを代弁するような詩が収められていて、読むと気持ちが安らぎます。
相田みつを著
ISBN:978-4579500420
文化出版局
1580円
たまに、仕事で壁に突き当たって落ち込むことがあります。新規案件に社内の理解や協力がなかなか得られない、なんて場面です。
そんなときは、相田みつを氏の詩集「にんげんだもの」を開きます。この詩集には我々が普段は口に出さない思いを代弁するような詩が収められていて、読むと気持ちが安らぎます。
特に「花を支える枝 枝を支える幹 幹を支えるのは根 根は見えねえんだなあ」という作品には共感します。企業にとってシステムは、まさに根のようなものですよね。何かトラブルが起きない限り、表に出ることはほとんどない。でも、会社を陰で支えているんです。そう思うと、元気が出ます。
「人を動かす」も、マインドが下向きのときに読む1冊です。プロジェクトの進捗が思わしくないとか、メンバーが思うように動いてくれないなど、マネジメントで行き詰まると手に取ります。この本は、相手を思い通りに動かすためのコミュニケーションについて、「聞き手にまわる」「相手を批判しない」といった具体的な手法を解説しています。70年以上前に書かれた本ですが、内容は全く古びていない。読むたびに、“聞くこと”の重要性と難しさを教えられます。
ちなみに、私にとって理想の上司は「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵です。火付盗賊改方の長官として悪を厳しく断じる一方で、情には厚い。肝が据わっていて頼りになる。彼こそ、上司の鑑ですよ。
週に2回は書店に行き、目についた本を数冊買います。1年に10回ほどの海外出張時も、本は欠かせません。往復の飛行機で1冊ずつ、それにホテルで寝る前に読む分を合わせて、毎回5冊くらい買いこんでいきます。
読書の楽しみに目覚めたのは、中学3年生のとき。最初は受験勉強からの逃避でした。机に向かって何か読んでいれば、親は勉強していると思うでしょ(笑)。不純な動機でしたが、本を読む習慣が身に付いたのはそれからです。大学受験の前には、平井和正氏によるSF大長編「幻魔大戦」にハマりました。友人から「すごい本がある」と聞いて、読まずにいられなくなってね。1週間というもの、受験勉強そっちのけで読みふけりました。
おもしろそう、読みたい、と思うと我慢できない性分です。最近では、佐藤多佳子氏の「一瞬の風になれ」がそうでした。これは、陸上競技に打ち込む高校生が主人公の青春小説です。土曜日の昼間に書店で見かけて、全3巻のうち第1巻だけを試しに購入。帰宅して読み始めたら予想以上におもしろくて、すいすい読み終えました。そうすると、続きが気になって仕方がない。その日の夕方もう一度書店に行き、残りの2〜3巻を買いましたよ。結局、その週末で全巻読了してしまいました。
話題になった本には、できるだけ目を通すようにしています。ビジネス書も読みますよ。ただ、ビジネス書はどうしても仕事の延長として読んでしまう。純粋に読書を楽しめないところがあります。私が本に求めるのは、“非日常”。それもできれば、ハッピーエンドがいいですね。
人を動かす
- デール・カーネギー 著、山口博 訳
- ISBN:978-4422100517
- 創元社
- 1575円
鬼平犯科帳
- 池波正太郎 著
- ISBN:978-4167142537
- 文藝春秋
- 570円(第1巻)
小坂 賢 おさか・けん
セイコーエプソン生産力強化戦略本部
情報化推進部 部長
1987年にセイコーエプソンに入社以来、一貫してIT業務に携わっている。92年から英国やオランダ、フィリピンの拠点に勤務し、2003年に帰国。現在、社内のITを担うシステム部門において、50人の部下を率いるリーダーを務める。
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