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[CIO INSIGHT]

リスクを恐れずアイデアを具現化し、イノベーションを促進する

Finding the Essence of Innovation By Samuel Greengard

2009年8月31日(月)CIO INSIGHT

オバマ政権の下、米国では電力網インフラをITで管理する「スマートグリッド」をはじめとしたイノベーションへの投資が加速している。企業が不況という難局を乗り切り、次の成長を迎えるためには、イノベーションへの取り組みが不可欠だ。今回は、CIO INSIGHTの中からイノベーションに関する2本の記事を取り上げる。イノベーションにいかに取り組むべきか。その方策を探っていこう。(翻訳 : 古村 浩三)

“イノベーション”とは、何をすることなのか。よく議論になるが、100人のCIOがいれば100通りの解釈がある。この点で、イノベーションという言葉の意味を正しく把握しようとする努力は、大きな意味を持たない。重要なのは、企業の将来がイノベーションの実現能力にかかっていることへの認識だ。

米信用情報サービス大手、エクイファックス(Equifax)でCIO(最高情報責任者)を務めるロバート・ウェッブ氏は、このことを良く理解している。年商19億ドルに上り詰めた同社は、社員からアイデアを引き出したり、試行したり、うまくいきそうなものについては実際のビジネスに適用するプロセスを作り上げた。ITを組み込む仕組みもある。

一連の取り組みをリードしてきたウェッブ氏は、「アイデアを実行可能な計画やプログラムに変換していく能力は、競争上の優位性をもたらし、利益の向上や成長へと導いてくれる。イノベーションは我々のような企業にとって欠かせないものだ」(ウェッブ氏)。

CIO INSIGHTでは、専門家やCIOへインタビューを実施し、イノベーションの課題や成功の指針をまとめた。

イノベーションが困難な理由
成功のための万能薬はなし

一口にイノベーションといっても、何をどうすればいいのか、そもそもどんな概念なのかがつかみにくい。「これをやればイノベーションが達成できる」といったテンプレートも存在しない。実際、優れていると思ったアイデアがうまくいかず、ありふれているアイデアが意外に成果をもたらすケースもある。有効なアイデアを確実に見分ける、一貫した手段は存在しない。

前出のエクイファックスのウェッブ氏をはじめ他の多くのCIOが、こうしたことを実感している。加えてイノベーションの有効な道具であるITは、驚異的なペースで進化している。その状況の中で、IT部門は企業が直面する問題解決と、ITを活用したプロセス改善という2つの役割を、同時並行で果たさなくてはならない。

イノベーションが困難な理由はまだある。企業によってビジネスモデルや文化が千差万別であることだ。グーグルでうまくいった方法が、小売業のウォルマートといった他の業種・業態でそのまま活用できるとは限らない。採り得るアプローチは無限に存在する。例えば、先進的なITを他に先駆けて導入することは、競争力の向上を必ずしも約束するものではない。

しかし、だからといってイノベーションに取り組まないという選択肢は、存在し得ない。冒頭で示したように、企業の将来がかかっているからだ。

アイデアを成果に結び付けることが大事

イノベーションに成功している企業やCIOは、どのように取り組んでいるのだろうか。アイデアをビジネスやITの改善に結び付け、収益を上げるためにはどう工夫すれば良いのだろうか。

ハーバード・ビジネス・スクールの准教授であり、Web2.0ツールの企業利用を「エンタープライズ 2.0」と提唱して研究するアンドリュー・マカフィー氏は、「イノベーションのためのしっかりとした基礎を作り上げるためには、自社のビジネスの原動力が何かを良く理解することが先決。ITを正しく導入・活用することも必要だ」と語る。

一方、イノベーションそれ自体は目的ではなく、継続的な取り組みが必要な活動である。戦略コンサルティング会社であるボストンコンサルティンググループが2007年に実施した調査では、2468社の上級管理職の46%が、イノベーション戦略から得られる結果と投資対効果(ROI)に満足していないという結果になった。

背景には何があるのか。イノベーション専門のコンサルティング会社であるイノサイトのスコット・アンソニー社長は、こう語る。「創造的、独創的なアイデアが出てくるのは当然良いことだ。だがそれを具体的な行動や成果に結びつけないと意味がない」。つまり、アイデアの創出まではできても、それに基づく具体的なアクションをとれていないのではないか、というわけだ。

前出のエクイファックスでは、アイデアの提案や討議、吟味に必要な時間をスタッフが捻出できるよう配慮している。アイデア開発のための短期集中型のセッションには、部署を問わず100人以上のスタッフが全米各地の事業所から集まる。「こうした“起業家チーム”が、若芽のアイデアから新規事業を生み出す」と、ウェッブ氏は語る。

出てきたアイデアは、試行も含めて原則として具体化する。すでに成果も出ている。2年前、同社はクレジットの認証に査定や、“権原保険”(注:不動産の権限に瑕疵がないことを保証する保険。日本では一般的ではない)を結び付けたサービスを開始した。実現するための情報システムも新規に開発し、従来からのビジネスを強化することに成功した。

情報システムの開発には費用がかかるが、それほど困難ではなかったという。アイデア創出のプロセスの中で、必要なシステムやソフトウェアを特定していたからである。「ブレーンストーミングで出てきたアイデアを伝えてもらい、IT部門がそれをダイレクトに具体化していった」(ウェッブ氏)。

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