先進技術に対する関心と現実、急浮上するデスクトップ仮想化
2010年3月3日(水)CIO INSIGHT
仮想化にモバイル、クラウドコンピューティング─。ITの世界では新技術が次々と生まれている。米国企業のCIOは、これらの新技術をどう捉え、どの程度活用しているのだろうか。今回は、CIO INSIGHTが実施した最先端技術の企業ITへの活用に関する調査結果を取り上げた。最先端技術にすぐさま飛びつき先行者利益を得るか、リスクやメリットが明確になるまで様子見を決め込むか。調査結果からは、自社のスタイルや目下の景気後退をふまえ、新技術に真摯に向き合う米企業の姿が浮かび上がってくる。(翻訳 : 古村浩三)
最新の技術トレンドと呼ばれるもののうち、どれが大きなヒットとなるかを理論的に予測するのはそれほど難しくない。言い換えれば、そのための調査は何らの意味を持たないということだ。だが、最先端技術がいつ現実の企業情報システムに浸透するかをピンポイントで予測するのは難しい。今回の調査でCIO INSIGHTが明らかにしようとしたのは、まさにその点である。
いくら成長を期待された技術とはいえ、ユーザー企業に広く普及するまでには長い時間がかかる。ベンダーやアナリスト、マスコミが「今年はこんな新技術が大きなトレンドになる」と書きたてても、彼らが実際に取り上げている技術は毎年似通った顔ぶれだ。本来示すべきは、その技術は現在どの程度実用化されているのかという事実だろう。
CIO INSIGHTは、この傾向にストップをかけるためにある施策をとった。現場で実際に使われている技術かどうかにフォーカスを当て、活用の現状を客観的に検証することにしたのだ。実用化が近い最先端技術である「エマージングテクノロジー」は、どのような過程を経て、どのような形で採用されているのか。それを示すことで、ユーザー企業が最先端技術を利用してビジネスを変革する際の指針としたいというのが我々の意図である。
クラウドの注目度は高いも実活用はまだ先
今回の調査結果の概要を表1に示した。調査で取り上げたエマージングテクノロジーは、多くの企業で実際のテストやパイロットプロジェクトの段階まで進んでいる。CIO INSIGHTは、これらの技術が向こう1年以内に本格的に普及すると予測しており、今もっとも注視すべき技術だと考えている。
注目度と活用度に乖離がある典型例は、クラウドコンピューティングだ。クラウドはここ数年、仮想化と肩を並べる注目を集めており、刺激的な宣伝も多い。今年の調査でクラウドに対して調査やテストといった何らかの取り組みをしていると回答した企業は昨年の倍に達し、取り組み度合いは昨年の10位から2位に躍り出た。
だが、テストやパイロットプロジェクトを実施しているか、本番稼働しているかといった具体的な活動に目を向けると、実用化の面では仮想化のほうがクラウドよりもずっと先を行っている。企業内情報システムでクラウドが本格的に活用されだすのは2〜3年先と見るのが妥当であろう。
最先端技術に対して企業が採るべき道は3つあるといえる。1つ目は、長期的に見て十分な投資対効果があると確信できるまで、サービスの成熟を待つこと。多くの企業がこのアプローチを採ると考えられる。2つ目は、リスクを回避しつつ新技術を積極的に採用して、可能な限り早期にベネフィットを得ること。導入プロセスや評価方法、運用管理の手法についての十分な検討が不可欠だ。3つ目は、多くの情報を得ることなく、リスクの認識も薄いままに新技術を闇雲に採用してしまうこと。この場合は当然ながら不本意な結果に陥る可能性が高い。
我々はこの調査を通して、読者を可能な限り前者2つのアプローチに導きたいと考えている。だが、企業が実際にどのアプローチを選択するかは、全社的なアプローチや個々の企業のニーズ、スタンスなどに依存する。ほとんどの企業は安全を最優先するが、エマージングテクノロジーに本当に大きなチャンスを見いだしたなら、リスクを受け入れつつ積極的に導入を推進していくべきだ。
(詳細な調査結果と解説を次ページに一挙掲載)
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