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[CIO INSIGHT]

コスト削減と効率追求だけが使命ではない─収益向上の道を切り拓くCIO

The CIO as an Engineer of Revenue By Kay Lewis Redditt and Thomas M. Lodahl

2010年8月30日(月)CIO INSIGHT

IT部門はコスト削減や効率向上を担う部門であり、収益向上とは関係がない─。こうした認識が存在する背景には、IT部門が収益向上に貢献する能力を持っているのだという事実を、経営者や現業部門のリーダー(ビジネスリーダー)がよく理解していないことがある。収益向上を目的としたプロジェクトにIT部門が積極的に関与するためには、CIO(最高情報責任者)自らがビジネスリーダーに語りかけ、プロジェクトの初期段階からかかわりを持つことが必要だ。(編集部)

最小の投資でできるだけ多様な施策を継続するために、IT部門は何をすればよいだろうか。業務上のコストを削減したり、効率向上のためにさらなる策を講じるというのは確かに重要だが、もう1つ必要なものがある。それは収益向上だ。これは全体的な利益率の改善を目指してきた多くの企業にとって、市場の停滞時には目をつぶらざるを得なかった目標である。

本稿では、収益向上のために努力をしてきた何人かのCIO(最高情報責任者)の取り組みを紹介する。だがその前に、この20年間にビジネスの目標がどう変化してきたか、目標の達成のためにITがどう貢献してきたかを振り返ってみよう。

ビジネスマネジャーの意識はコスト削減から収益向上に

筆者が在籍するITコンサルティング企業、米コグニテック・サービシズが、現業部門を統括するビジネスマネジャーに対して実施した調査結果によると、眼前の目標としてコスト削減や効率向上を挙げた人は、1991年では全体の11.9%を占めていたものが、2009年では8.0%と約33%減少している。一方で収益向上を目標に据える人は、13.5%から26.1%とほぼ倍増した(図1)。

ビジネスマネジャーが掲げた業務目標と、それに対するIT部門の貢献度の比較。
図1 ビジネスマネジャーが掲げた業務目標と、それに対するIT部門の貢献度の比較。ビジネスマネジャーが掲げる業務目標のうち、収益向上の重要性が増加している。一方でコスト削減/効率向上については重要性が低下傾向にある。一方で、IT部門は収益向上よりもコスト削減/効率向上に貢献する部門だと捉えられているのが現状だ(画像をクリックで拡大)

コストや効率性の重要性が低下していくのは長期的な傾向だ。IT部門が引き続きコスト削減や効率性に重きを置くとすれば、それは多くの企業が狙っている長期的なビジネス戦略とは合致しないことになりかねない。

多くの企業では、長い間コスト削減や効率向上に焦点を当て続けてきたため、改善の余地は既に少なくなっている。ビジネスマネジャーの多くはこのことを認識しており、コスト削減や効率向上から、収益向上にその関心を移しつつある。

IT部門は過去20年以上にわたり、ビジネスマネジャーが掲げたコスト削減や効率向上という目標を達成すべく、十分に能力を発揮してきた。それを数字で示す1つの指標がある。ビジネス目標の達成のためにIT部門がどの程度貢献したかをビジネスマネジャーが評価した数字である「IS Contribution」(IS貢献度評価点)の経年変化を見ると、この20年間に10ポイントの改善を見せた。IS貢献度評価点は、コグニテック社が考案した評価指標。民間企業では評価点と利益率との間に非常に高い関連性があるとして、これまで230以上の企業が採用している(カコミ参照)。

IS Contribution(IS貢献度評価点)とは

IS貢献度評価点は、ビジネス目標の達成に対してIT部門がどれぐらい貢献しているかを数値で示したもの。企業内の各事業部門のシニアマネジャークラスに対する意識調査をもとに、独自の基準でスコア化。各企業の評価結果の平均値が50、分布のばらつきを示す標準偏差が10になるように標準化したものを評価点として算出する。

評価点が48を超えると、評価点の増加に正比例して利益率が増加する傾向がある。

「IT部門≠収益向上」?理解不足がIT活用を阻害

ビジネスにおける収益向上という目標に対して、IT部門は貢献できているのだろうか。実際にはその貢献度は低下してきていると、ビジネスマネジャーは考えているようだ。20年前、IT部門はコスト削減や効率向上よりも収益向上に貢献していると評価をしていたビジネスマネジャーが多かったが、最近の4年間でその評価はまったく逆転してしまった。実際、収益向上という目標に対するIS貢献度評価点は「48」に甘んじており、かろうじてIT部門がビジネスの目標に対して貢献しているといえるレベルにまで落ち込んだ。

なぜ「IT部門は収益向上に十分に貢献できていない」と思われているのか。その理由を探っていくと、逆説的かもしれないが、ビジネスマネジャーがIT部門に対して収益向上を要求していない、ということに行き着く。ビジネスマネジャーは、IT部門はコスト削減や効率向上といったプロジェクトに関わる部門という印象が強く、収益向上という分野でIT部門がどんな能力を持ち合わせているかを理解していない。そのためIT部門に収益向上への貢献を要求するにしても、何をどう要請したら良いのか分からないのだ。

業務へのITの適用が始まった当初は、ITによる業務自動化はコスト削減の手段だと思われていた。そうした背景があり、IT部門はコスト削減を実現する部門だというのがビジネスマネジャーの認識であり、収益向上にどう貢献してくれるかという明確な認識を持っていないのだ。結果として、CIOが収益向上に関するプロジェクトに関与して推進していくためには、CIO自らがそのようなプロジェクトを探さなくてはならないという状況になっている。

ITがもたらすコスト削減の効果は斬減しており、目に見える形で示すのは難しくなりつつある。一方、ビジネスマネジャーが求める収益向上という目標に、最新のITは十分なポテンシャルを持っている。

一例が、顧客関係管理(CRM)のソフトウェアパッケージである。CRMは営業部門と顧客とを結び付け、営業部門のスタッフの業務効率を改善する。統合業務(ERP)パッケージを上手く使えば、製品の在庫や入荷日、最新の価格情報などを取引先に直接かつ迅速に示すことができる。インターネットを使った製品販売やサービス提供の仕組みは爆発的に発展してきており、旧来のビジネスのやり方を覆す新しい世界を実現している。

IT部門がプロジェクトの目的設定の段階から参画し、こうした目に見えるITの能力を収益向上に関するプロジェクトに投入すれば、コスト削減や効率向上でこれまで活躍したのと同じように、収益向上においても充分に貢献できる。ここで、利益向上の仕組みを作りあげたCIOたちの取り組みの例を紹介しよう。

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