[イベントレポート]
IBMの世界イベントがラスベガスで開幕、三菱東京UFJ銀行のITプロジェクトが国際的に評価
2009年10月28日(水)IT Leaders編集部
エンターテイメントの街、米ラスベガス。劇場やカジノは夜中になっても人出と歓声が絶えることがない。文字通り「夜も眠らない」この地で2009年10月25日(米国時間)、「IBM Information On Demand(IOD)2009 Global Conference」が開幕した。会場のマンダレイベイホテルには世界中のIBM関係者やパートナー、ユーザー企業など約6000人が集まり、午前7時の朝食時から、夜の熱気をしのぐ盛況に沸いている。
Information On Demand(IOD)は情報活用をテーマに、IBMが2006年から開催しているイベントである。4年目となったIOD2009では「INFORMATION-LED TRANSFORMATION」、すなわち「情報活用に基づく変革」をメインテーマに掲げ、データの蓄積にとどまらず、精査と予測・分析を含む徹底活用の重要性を前面に押し出した講演と発表を重ねている。
2009年10月26日午前8時15分の基調講演の舞台に上がったソフトウエアグループのAmbuj Goyalゼネラルマネジャは最近の景況を踏まえ、開口一番、「昨年ほど多くの参加があるか憂慮していた」と本音を打ち明けた。だが、基調講演会場には開場と同時に人波が途絶えることなく押し寄せた。そこには金融リセッションの暗い影は微塵もない。
基調講演の中で、情報活用によってビジネスの価値を高めた企業を表彰する「2009 Information On Demand Customer Innovation Award」の発表があり、表彰分野の1つ「DATA MANAGEMENT」において、世界最大規模のシステム刷新プロジェクトを2008年末に完遂した三菱東京UFJ銀行が主要な賞を獲得。大規模データウエアハウスの構築と、データ圧縮やデータベースの自動チューニング機能を活用した勘定系・情報系システムの先進性が評価され、世界中から集まった観衆の前で称えられた。
この受賞の意味は、日本のITにとって決して小さくない。というのも、邦銀がIBMとタッグを組んで実現した情報システムが、世界の最先端をひた走ってきた前例があるからだ。
周知の通り、IBMと邦銀の関係は深く、情報システムの進化の世界史に記録すべき挑戦的なプロジェクトを成し遂げてきた。古くは1960年代の三井銀行の第一次オンラインシステムの事例がある。東京オリンピックのために開発した競技記録の速報システムに由来するこのシステムは、現在のオンラインシステムの先駆けとなった。今、日本では、銀行の本支店・出張所に加え、コンビニエンスストアにまでATM(現金自動預け払い機)が普及しており、24時間の入出金も珍しくない。当たり前の環境と思いがちだが、これだけ銀行オンラインシステムが普及・発達している国は他に類を見ない。
三菱東京UFJ銀行の受賞を“ご褒美”とみるか、情報活用の先進国になる契機とみるか。後者とみれば、オンラインシステムに続き、情報活用の分野でも日本が世界のトップランナーになる可能性は十分に考えられる。
IOD2009については、IT Leadersの誌上で詳報する予定だ。IODは情報投資を単に抑制する方向にある現在の風潮を見直す機会を与えている。世界はすでに次の一手を探り始め、明確なIT戦略を描きつつある。
(訂正)タイトルおよび本文中に「東京三菱UFJ銀行」とありましたが、正しく は「三菱東京UFJ銀行」の誤りです。また、本文中「同日午前8時15分」は「26日 午前8時15分」の誤りです。お詫びして訂正いたします。上記2点はすでに修正済 みです。(2009年10月30日午後1時15分)