米Arista Networksは、2007年に製品出荷を開始したネットワーク・スイッチ機器の新興ベンダーである。その時点で最も価格性能比が優れたプロセッサを選んで随時マーケットから調達するハードウエア作りと、ハードウエアに依存しない独自OSの組み合わせに特徴がある。
インプレスビジネスメディアは2009年12月1日、東京エレクトロンデバイスが開催したユーザー・フォーラムに合わせて来日した国際営業代表のCharles W.Will氏に、ネットワーク・スイッチの市場動向を聞いた。
---ネットワーク・スイッチの市場動向と需要について教えてほしい。
2003年から2018年までの今後15年間で、x86系サーバーが使われる対象システムは大きく変わる。2003年時点ではインハウスのデータ・センター用途が80%を占めるが、2018年時点では30%にまで落ちる。代わりに台頭するのが、HPC(High Performance Computing)用途や、検索エンジンなどのWeb系サービス、SaaS/PaaSなどの公開サービスの基盤としての用途だ。
ネットワーク・スイッチの需要も、x86系サーバーの需要と同様に、HPCやWeb、パブリック・クラウドで高まっていく。アプリケーション開発/実装手段としてのWeb 2.0が台頭し、サーバー間のトラフィックが増加し、映像などの大容量データを扱うようになり、仮想環境においては仮想サーバーのプロビジョニングが当たり前になる。こうした環境の下、ネットワーク・スイッチへの要求は高まる一方だ。
---米Arista Networksのスイッチの特徴は何か。
主要製品は、ラックマウント型の10GbEスイッチだ。最大の特徴は、シャーシ型の製品を売っている歴史のあるレガシー・ベンダーと比べて、ハードウエア性能が高いことだ。その時その時点で最も高性能でコスト効率がよいプロセッサをマーケットから調達することでハードウエア性能を高めている。
例えば、ポート密度は、高さ1Uのラックマウント型きょう体に10GbE×48ポートを実装しており、レガシー比で3~8倍になる。ポート単価は、レガシー比で5~10分の1以下となる。ラック内の遅延時間(レイテンシ)は、1~3マイクロ秒程度と、レガシー比では10分の1以下になる。
プロセッサ・ベンダーを問わずに性能が高いプロセッサを随時調達するやり方が可能な理由の1つは、2007年に製品出荷を開始した若い新興ベンダーであるということだ。身動きが軽く、こうあるべきという理想的な経営が可能である。さらに、ハードウエア・アーキテクチャに依存しない独自OS「EOS」を用意している点も重要だ。9種類のハードウエア上で同一のOSが動作している。
Active-Active構成によるバックアップ経路の有効活用も可能だ。レガシー・ベンダーの場合はSTP(スパニング・ツリー・プロトコル)による経路の切り替えなどのActive-Standby型の経路2重化を採用しているが、米Arista NetworksはMLAGと呼ぶ方式により、メインとバックアップの経路の両方を同時に利用する。
---運用管理面での特徴はなにか。
米VMwareのサーバー仮想化ソフト環境であるVMware vSphere 4と組み合わせて利用するための、vEOSと呼ぶ運用管理機能を用意している。vEOSは、vSphereのコントロール・パネルと連動して動作する管理CUI(キャラクタ・ユーザー・インタフェース)コマンドであり、vSphere製品群を補完する。
vEOSを使うことで、物理スイッチ機器と仮想アプライアンス型のスイッチが混在したネットワーク・スイッチ環境を一元管理できるようになる。vEOSは、米Arista Networksのスイッチ機器の一機能として実装されているほか、VMware上で動作する仮想アプライアンス・サーバーの形態でも提供する。
---米Arista Networks製品の典型的な事例を紹介してほしい。
事例の1つ目は、低遅延/高性能というハードウエア性能を生かしたものだ。例えば、日本の金融機関の例だが、1秒あたり3000トランザクションの電子取引のネットワーク・スイッチとして使っている。
事例の2つ目は、iSCSIやNASなどIPベースのストレージ利用の基盤として使う例だ。DELL/EqualLogicのiSCSIストレージとのインテグレーション事例が増えている。なお、FCoE(FibreChannel over Ethernet)はマーケットの需要が高まっていないため、様子見である。
事例の3つ目は、Web系のサービス事業におけるサーバー間通信やインター・コネクト需要だ。大量ユーザーからのアクセスと、背後のデータ・ストアとを結び付ける。オブジェクト・キャッシュのmemcachedなどを用いたデータへの高速アクセスが可能になっている昨今、ネットワーク・スイッチの需要は高まるばかりだ。
【訂正履歴】 本文中、ユーザー事例の説明内容に誤りがあったため、訂正しまし た。(2009/12/18)