ユーザー企業の間でレガシーマイグレーション機運が高まる一方で、ベンダーは過去に蓄積したノウハウをマイグレーションサービスに反映している。NECや日立製作所など大手5社のサービス最新事情をみていく。
NEC、日立製作所、富士通、日本IBM、NTTデータの各社が提供しているレガシーマイグレーション・サービスはほぼ共通。大きく5つのフェーズがある(図4-1)。最初の「現状把握」では、ライブラリや仕様書などのメインフレーム資産を棚卸しする。続く「資産分析」で、棚卸しした資産の利用状況(COBOLプログラムの稼働状況など)を調べてマイグレーション対象となる資産を絞り込む。
計画策定フェーズでは、対象プログラムの一部に自動変換ツールを適用。自動化できない作業工数などを見積もり、作業全体のスケジュールを立案する。その後、「移行作業」を実施し、テストを経て「本番移行」する。
このサービスの流れ自体は今も昔も基本的に変わらない。しかし、個々のフェーズで実施する作業の品質は高まってきているといえる。
言うまでもないが、ユーザー企業はそれぞれの事業環境に合わせて、メインフレーム上のシステムを改修してきた。その資産はユーザー各社の事業の歴史であり、どれ1つとして共通のものがない。そのため例えば、同じIBM製メインフレームを利用するユーザー企業でも、マイグレーション時や後に異なる問題が生じることがある。
言語による違いも存在する。ひと口に「COBOL」といってもバージョンが違えば、自動変換ツールを使っても完全に同じように変換できるわけではない。コンパイルしたプログラムの演算処理ロジックが、メーカーごとに幾分か異なるという話もある。
国内のメインフレーマなどレガシーマイグレーション・サービスを提供する各社は、このようにケースによって異なる問題とその解決策を蓄積し、サービスの品質向上に努めてきた(表4-1)。以下、各社がマイグレーション・サービスの強みとして打ち出しているポイントを見ていこう。
日本IBM
オープン環境もzに統合
日本IBMが2009年4月に開始したマイグレーションサービスの「System z Currency Transformation(zCT)」は、IBMや他社製メインフレームからIBMの「System z」へのマイグレーションを支援するサービスだ。System zはLinuxが動作するため、分散して運用が煩雑になったオープン系サーバーを逆にSystem zに“マイグレーション”して統合できる点を1つの売りにしている。
日本IBMはSystem zへのマイグレーションを検討中のユーザー企業に対し、同社が千葉の幕張に設けた検証施設「z Modernization Center of Competency(zMCoC)」を無料で公開している。メインフレーム資産をSystem zのLinux上へ、あるいはサーバー統合を目的にSystem zへのマイグレーションを考えるユーザー企業は一考の価値があるだろう。
日本IBMはレガシーマイグレーション機運の高まりを受けて、ツール類の整備も進めた。過去にマイグレーション案件に携わった技術者が自身の作業効率を高めるために自作したソース解析ツールやマニュアルなどを集めた。これにより「一般的な移行ツールだけでは自動化できない作業を、技術者の“引き出し”に埋もれていた自作ツールで補完できるようになった」(杉浦友佳ソフトウェア事業システムz ソフトウェア統括部長)。
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