富士通は4月14日、野副州旦元社長の辞任をめぐり、緊急記者会見を開催。間塚道義会長が、「野副氏は自己に都合の良い情報ばかり発信している。今日は、正確な情報を伝えるべく会見に挑んでいる」としたうえで、一連の騒動について経緯や見解を述べた。会見には、藤田正美副社長と代理人弁護士である井窪保彦氏も出席した。
間塚会長の説明によると、野副氏が富士通子会社であるニフティ売却案件に関与させようとしていたファンドについて、2009年2月に「反社会的勢力との関係が疑われる」との情報が寄せられた。このため、秋草直之取締役相談役が野副氏に口頭で注意したところ、野副氏は自らそのファンドを「怪しげ」と認めてニフティ案件から外すことを明言した。
ところが同年7月、野副氏が当該ファンドとの付き合いを継続していることが判明。間塚会長と秋草相談役、大浦溥取締役の間で、同氏は代表取締役として不適格という判断に至ったという。間塚会長は「(反社会的勢力との関係が疑われるファンドの)風評・評価が事実であった場合に生じるリスクが極めて大きいということであれば、代表取締役社長という立場にある限りは関係を自粛する、当社の事業に関与させない、という判断が必要だ」とし、野副氏の辞任理由は「リスク感覚の欠如にある」と言明した。
間塚会長は、社長の辞任理由を当初「病気療養のため」と開示していたことについても釈明。「ファンドに風評被害を与えないことや野副氏の名誉、当社の風評を考慮した結果だった。株主や投資家、東京証券取引所をはじめ多くの関係者にご迷惑をおかけしたことを深くお詫びする」と頭を下げ、「こんなことになるなら辞任ではなく解職という処置をとり、その背景をきちんと明らかにすべきだった」と苦々しく語った。
一方、野副氏は富士通取締役としての地位保全を求める仮処分を申し立てたが、4月6日に取り下げた。間塚会長はこの件に関して、「互いの言い分や証拠を出し合って結審した後の取り下げには、非常に疑問を感じている」と遺憾の意を表明。野副氏が第3者機関による外部調査委員会の設置を求めていることに対しては「裁判所は、客観性や公正さが担保された究極の外部調査委員会。もし第3者の判断を必要とするなら、まず裁判所の判断を仰ぐべきだろう」と疑問を呈した。
説明後、「辞任を要請する前に、ファンドについてなぜ事前に注意してくれなかったのか」という野副氏のコメントについて報道陣から見解を求められると、間塚会長は「先に説明したように、2月に秋草取締役相談役が注意した。このことは、事実確認の場で本人も認めている」と反論。そのやりとりを録音したテープを裁判所に提出済みであることを示唆した。 そのほか、主な質疑応答は以下の通り。
問:辞任要請が取締役会の当日だったのはなぜか。もっと早い時期に本人に事実確認すべきだったのでは。
答:社外取締役や監査役に状況や調査結果を説明し、辞任要請を了承してもらうのに時間がかかった。
問:その後、野副氏は取締役会に出席しなかった。なぜか。
間塚:氏はその場で辞任届に署名し、我々はそれを受け取った。その時点で、野副氏は取締役ではなくなったということだ。
問:取締役会で弁明する機会を与えるべきだったという意見もあるが。
答:取締役会で解職を議題にするより、事前に本人の意志で辞任してもらうほうが穏当であるという判断からだ。
問:社内取締役にはいつ伝えたのか。
答:取締役会開催前だ。執行取締役は日ごろ野副氏と行動をともにすることが多いので、辞任要請について前もって知らせると何かとやりにくいだろうと配慮した。
問:野副氏がファンドとの関係を継続していると分かったのはいつか。
答:2009年7月、複数の調査機関からの報告から判明した。野副氏は、2月に秋草氏が注意した際に「ファンドを外す」と約束した。企業を束ねる社長と相談役の約束は重い。その重い約束を守らない野副氏との信頼関係は、このときなくなった。私と秋草相談役、大浦取締役で協議した結果、「いくら注意しても止まらない」ということで辞任を要請することにした。
問:外部調査機関を設置する必要性は考えていないのか。
答:考えていない。仮処分申し立てを審理終結後に取り下げておきながら、今になって第3者機関の調査が必要だと言っても、耳を傾ける人はいないのは常識。事ここに至っては、裁判所という最も透明性が高く公明正大な機関に判断を委ねて決着を付けることが望ましい。
問:野副氏と親しかった社員が、地方の事業所への異動といった処遇を受けているというのは本当か。
答:野副氏に近い幹部を配置換えしたのは事実だが、これはファンドとの関係を断つため。一時的なもので、粛正人事ではない。
問:野副氏を裁判で訴える可能性はあるか。
答:そういったことも含めて検討していく。