[河原潤のITストリーム]

バズワードの価値を見極める:第15回

2010年4月28日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

コンピュータの世界では「バズワード」がよく飛び交います。「いかにも、もっともらしい専門用語。専門家や通人が好んで用いるような言葉」(大辞林 第二版より)は、企業情報システムの現場において、どちらかというとネガティブなニュアンスで使われるケースが多く、例えば、「バズワード=ITベンダーの宣伝文句」のような印象を抱いている方もかなりいらっしゃるのではないでしょうか。

 MIS、SIS、EDI、ERP、SCM、CRM、SFA、EAI、SOA、BPM、BPO……いわゆるITの3文字略語は、登場初期にITベンダーや専門家、メディアの間でさかんに使われ、ほとんどがいったんはバズワード化します。近年だと、SaaSは3文字ではありませんが、2005年頃に登場した後、しばらくはWeb 2.0と並ぶ大物バズワードの扱いでした。

 また、ある技術や概念を言い表すのに、あまりに広い意味を持つ言葉を当てはめたとき、その言葉は往々にしてバズワード化します。2000年代前半に分散コンピューティング技術の新しい潮流として注目された「Webサービス」はその典型と言えます。ITにおける「サービス」の概念が浸透しつつある今なら、ネーミングの意図をもう少しすみやかに理解できそうなのですが、2001年頃にWebサービスという言葉を聞いて、それが「XML、HTTP、SOAPなどの標準仕様を利用して、異なるプラットフォーム上のアプリケーションとの連携・統合を可能にするソフトウェア・コンポーネント技術の総称」などと説明されても、なかなかピンとこなかったのを覚えています。

 バズワードとは、内容がすぐには理解しにくい/万人に価値が伝わりにくい技術・概念が現れたときにひとまず貼り付けておく“レッテル”、あるいはひとまず放り込んでおくための“未整理フォルダ”のようなもので、よくある「○○○はバズワードであるか否か?」という議論にはあまり意味がないと考えています。登場初期にいったんバズワード化したものでも、その後の普及や進化の度合いによって、そのレッテルがはがれたり、はがれなかったりします。例えばSaaSであれば、当初、多くの人に“バズワード認定”されながらも、定義が徐々に明確化し、企業での採用が増えだしてからは、バズワードだと呼ばれなくなっていきました。

 そうした意味で、いま現在のバズワードの代表格と言えば、やはりクラウド・コンピューティングになるでしょう。このパラダイムは、「cloud=雲」という言葉を用いた時点でバズワードになることがほぼ決まっていたと言えますが、ユーザー側での受け止め方を見るに、今後は、SaaSと同じような変遷をたどって、バズワードのレッテルが徐々にはがれていくことが予想されます。

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