[技術解説]
業務を“蝕む”データの汚れ─「無秩序」「不整合」が蔓延するデータマネジメントの実態
2010年11月9日(火)大西 浩史(NTTデータ バリュー・エンジニア 代表取締役社長)
情報システムで活用しているデータは思いのほか汚れている。そして品質の悪いデータは日常的に業務上のロスの発生や、企業への信頼低下を招くリスクを膨らませている。簡易型の自己診断シートと身近に見られる低品質なデータの例を通じて、データマネジメントの現状を把握してみよう。
データマネジメントの不備
行政の例は氷山の一角
ほんの数カ月前、「安政年間に生まれた人が存命している」といった話題がテレビや新聞、雑誌をにぎわしていた。これが事実なら、長寿の国として世界が驚くニュースかもしれない。しかし、事実であるはずはなく、行政機関による国家的なデータマネジメントの不備を白日の下にさらしただけだった。住民基本台帳の仕組みは用意したものの、中身のデータと事実が異なっており、国民を正しく把握できていないことが原因である。
実は、データマネジメントの不備による現象は身近なところで日常的に発生している。同じ会社から同じ内容のダイレクトメールが何通も送られてきた。展示会案内の送付拒否の連絡をしたのに、引き続き送られてきた──。こうした経験をした読者は少なくないだろう。いずれのケースも大抵は企業におけるデータマネジメントの不備が直接の原因で、システム内で保有しているデータの重複や誤りによって起きている。
データマネジメントの不行き届きによるデータ品質の劣化は、今この瞬間も企業内で数々の問題を引き起こしている。典型的な問題を紹介する前に、まずは分かる範囲内で構わないので、図2-1の「簡易診断チェックリスト10」を使って自社の状況を概観してほしい。
いかがだろう。いくつかの項目、ひょっとすると半分以上の項目で「NO」をマークした方が多いのではないだろうか。
データマネジメントによってデータの登録や運用を統制していないと、データの品質を確保するのは困難だ。言うまでもないが、品質が悪いデータは事実と異なる状態を示しているにほかならず、そういったデータを利用することはビジネスにとって有益ではない。誤った経営判断やユーザーからのクレームを招く元凶になり得るのである。
どれだけ高価で高機能なシステムを導入しても、データの“健康状態”が保たれていなければ、そのシステムは単に「経営のお荷物」になるだけ。それだけならまだしも、自社のブランドへの信頼を失うことになりかねない。
10億円以上の無駄が発生しているケースも
データの品質劣化の実態と、それがもたらす経営への影響を2つ紹介しよう。最初の例は多くの企業で無駄な費用を発生させている可能性がある調達業務のケースである。
図2-2は、同一商品を購入した発注履歴のデータの一部だ。案件ごとに「分類名/分類CD」が「コンピュータ本体/A_1002」「ネットワーク機器/B_1001」「その他/C_1004」と違っている。「品目名」の表記もアルファベットや全角/半角カタカナが混在しているうえに内容もバラバラ。「仕様・規格」にいたっては、とてもではないが、同一製品だと認識するのは不可能である。
データがこのような状態だと品目ごとの発注量が把握できないのはもちろんのこと、「注文単価」の比較が困難なため、ビジネスにおいて大きな無駄を生んでしまう。この企業の場合は、「△物産」に発注すれば最安値の81万円でサーバーを調達できるにもかかわらず、4回にわたって割高な×商事と□通商へ発注し、合計40万円近く余分な費用が発生していた。しかし、データの品質が悪いため、コストダウンの機会を逸していることにも気付かなかった。
「メーカー名」の表記が案件ごとに違うので、メーカー別のシェアも見えない。もしメーカー別の実績値を把握できていれば、次回の調達時に価格交渉をするうえで重要な情報になり得るが、現状ではまったく利用できない。
図2-2は発注履歴データだが、まったく同じ状況が受注履歴データでも発生している。同一顧客を認識できない、商品ごとやグループ企業全体での受注量が見えない。これでは「大口需要家を対象に新商品の販促キャンペーンをやろう」と掛け声をかけても、効果的な施策にはならず、結局はキャンペーン費用と販売機会のロスを生んでしまう。
データマネジメントの不備によるロスは考えている以上に大きい。当社がかつて支援した企業の例だと、無秩序に登録された発注データを、紙の原票類と突き合わせながらクレンジングと正規化をした結果、約10億円以上のコストダウン機会が明らかになったケースもある。この企業はその後、仕入れを最安値の取引先に絞り込むことで、すでに5億〜7億円のコストダウンを実現している。
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