製品ライフサイクル管理(PLM)とは、設計から製造、販売、保守、サービス停止、そして最後の廃棄に至る製品ライフサイクルの全段階で、情報を基に製品管理に取り組むための統合的なアプローチである。本連載では、企業が製品の利益率を最大化するためのPLMの役割とメリットを明らかにする。
試作をしない「ものづくり」
携帯電話の売り場に行くと、実際に操作できる数台の携帯電話とともに、実物そっくりに作られた携帯電話の模型が数多く展示してある。この実物そっくりの模型は、携帯電話の外観や色、質、重さ、手触りなど、アプリケーション機能以外の特長を、購入前に確かめることを目的としている。これが日常生活において目にできる「モックアップ」の利用例である。
ものづくりにおけるモックアップとは、工業製品を新たに製品化する前に作成する実物大の模型のことだ。デザイナーがCADなどで設計した3次元デジタルモデルを製品化する前に、実際にはどのように見えるのか、どのように動くのか、不具合はないのか、といったことを確認するために作成する。携帯電話のモックアップは完成品を利用者が確認するものだが、ものづくりにおけるモックアップは製造前にデザインを確認するためのものだ。
モックアップは、デザイナー(または職人)が実際に木を削りだして作成していたこともあり、「木型」と呼ばれることもある。だが実際の木を削りだすには時間がかかるだけでなく、デザインの変更が発生したときに再度作り直さなければならないなど、手戻りの負担が大きかった。現在では、FRP(繊維強化プラスチック)や合成樹脂で作成されることも多いが、制作のための作業とコストが必要なことに変わりはない。
そこで近年、注目度が高くなっているのが、試作をしないものづくりを目的とした「デジタルモックアップ」の有効活用である。
仮想化とシミュレーション
前回、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめとする新興国の台頭で日本のものづくりが大きな変革のときを迎えていること、現在のものづくりの精神はそのままに、ITをフル活用して「品質」や「顧客満足」を追求することが必要なことを紹介した。だが「コスト削減」や「スピード化」の追求も、当然忘れてはならない大きな課題である。
こうした課題解決のためには、新製品の試作段階におけるモックアップの作成回数を最小限にし、デザインから試作までの手戻りを少なくすることが重要だ。このための手法が「デジタルモックアップ」である。デジタルモックアップとは、言葉が示すとおりにモックアップをデジタル化する手法のこと。CAD/CAMなどのテクノロジを活用して、コンピュータ上に3次元のモックアップを作成する。
モックアップの作成作業を、シミュレーションによるコンピュータの仮想空間上で実施することで、木を削りだすといった実作業が不要になる。デザインの変更に対しても、コンピュータ上で容易にシミュレーションできる。デザインからモックアップ作成における作業の手戻りを最小限に抑えることで、作業時間を短縮してモックアップの制作コストを削減できる。設計ミスの検出を早期化するといった効果も期待できる。
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