10ギガビットEthernetスイッチに絞って製品展開するネットワーク機器ベンダーが、米アリスタネットワークスだ。幅広い製品分野に手を広げない理由は、限られた経営資源を集中投入し、ネットワーク担当者の負荷軽減につながる製品機能を充実させるためだという。来日した同社のマーケティング担当バイスプレジデントであるダグラス・グーレイ氏に話を聞いた。
クラウドやスマートデバイスといった現在の企業情報システムを取り巻く潮流の中で、システムの足下を支えるネットワーク機器の重要性は日増しに高まっている。それに伴い、ネットワーク担当者の作業負荷や管理負荷も増大しつつある。
現在のネットワーク機器は、こうした負荷を十分に軽減できるほどの機能を提供できているのだろうか。残念ながら多くの製品はそうではないというのが、私の見方だ。それは、ネットワーク機器ベンダーが製品の革新を怠ってきたからにほかならない。
製品群の拡充は製品機能の充実に直結しない
なぜ製品の革新が進まないのか。誤解を恐れず私見を述べると、ネットワーク機器ベンダーの多くが、この業界の雄である米シスコシステムズ(の製品群の幅広さ)を意識しすぎたことに原因の一端があるように思う。各社はシスコに負けじと数多くの製品群を抱えていった。その結果、個々の製品機能を十分に洗練できなかったり、一時的にシェアを獲得できたとしても、機能面での優位性を保ち続けることができなかった。
そうした失敗を繰り返さないために、当社は「データセンターに適した10Gbイーサネットスイッチを世に送り出す」という明確な戦略に基づき、10Gbイーサネットスイッチに絞った製品展開を続けている。製品分野を絞っているとはいえ、中核製品である低消費電力型の「Arista 7500 シリーズ」を中心に、集積度を高めた「7050シリーズ」、レイテンシを抑えた「7100SX」、低価格の「7100T」と、幅広い用途に応じた製品展開を欠かさない。
差異化ポイントとして特に注力するのが、機能面、特にソフトウェア技術の革新である。シスコ製品の強さも、これまで20数年かけて培われてきたソフトウェアの機能が支えている。それに負けない機能を提供すべく、過去も現在も、そしてこれからも研究開発の強化を怠らない。
研究開発の成果は、専用OSである「Extensible Operating System」として具現化している。輻輳が発生したときに優先順位に基づいてルーティングしたり、システムを停止せずに新機能を追加する機能など、担当者の作業を効率化するために必要になるであろう機能を網羅している。
最近では、仮想化やクラウド環境を見据えた機能強化を加速している。例えば米ヴイエムウェアとの協業で、物理スイッチに加え、VMware ESX上で稼働する仮想スイッチを統合管理可能にした。他にもKVMやXenといったハイパーバイザ、JoyentやOpenStack、Eucalyptusといった主要なクラウド構築ソフトで利用可能にする取り組みを進めている。
メガベンダーの垂直統合は脅威ではない
米ヒューレット・パッカードや米オラクル、米デルといった欧米のメガベンダーは、積極的なM&Aで獲得した製品群を生かし、ネットワーク製品だけでなく、サーバーからストレージ、運用管理ツールといった自社製品を組み合わせ、垂直統合型のシステムを顧客に提案しつつある。
こうした動きが当社にとって脅威かといえば、そんなことはない。垂直統合型システムに魅力を感じるのは、社内に十分な専門知識がなく、マルチベンダー構成に踏み切りにくい企業が中心になると考えている。当社のターゲットはそうした顧客ではなく、システム構築や技術に関する高度な知識を持ち、適材適所で最適な製品を組み合わせられる専門家を擁する企業だ。ビジネスもテクノロジも理解している専門家であれば、製品技術を正当に評価してもらえるし、製品の価値を十分に引き出せる。
メガベンダーは競合というより、むしろ当社の重要なパートナーという認識だ。実際、金融業界向けの製品導入にあたってはHPと協力して進めているケースも少なくない。オラクルに対しては、当社スイッチの設計に関するライセンス提供をしている実績がある。
日本市場には2009年2月に参入し、導入企業は既に70社に達する。これはグローバルでの全顧客数900社の約1割に相当するもので、重要市場の1つという位置づけだ。現状の日本法人のスタッフ数が設立時から約2倍になっているのも、それを反映している。国内ではグローバルに事業展開する金融業や、政府/研究機関といった企業が導入しており、この傾向は世界と変わらない。販売や顧客サポートに関しては、国内販売代理店である東京エレクトロンデバイスと良好な関係が築けている。(談)