デジタル情報革命は現在も進展中であり、恐らくまだ100年単位で続くだろう。筆者が初めて企業に就職した当時からわずか40年余りで、ICTの世界は様変わりした。現在のPCが持つ性能は、当時工場で使っていた汎用コンピュータを遥かに凌ぐ。マルチメディア機能に至っては、比較にならないほどだ。インターネットの普及も想像を超えている。
意識の改革が重要
これから50年、100年後のICT社会を正確に予測できる人は誰もいない。ICチップの集積度の向上や通信の高度化、端末類の使いやすさの進展、ソフトウェアやソーシャルメディアの充実といったことが、これらと関連するイノベーションとのシナジーによって無限の可能性が生まれる。社会やビジネスの変革は、過去40年の比ではないだろう。このICTの進展は業務のやり方やワークスタイルに変革をもたらす。それは企業にとって大きな儲けの源泉となる。情報システム部門は、単なるサポート部門ではなく、生産部門や開発部門と同様にビジネスの「本業」を担っているという意識に立って、ことにあたることが重要である。会社の新たな事業や市場、収益を生み出すという点で、情報システム部門は「本業部門」そのものなのである。
ICTの世界は、常にコンセプトやビジョンが先行する。しかも、その先行の度合いが著しく大きい。昔から、MISやSIS、CALSといった言葉がブームになっては消えていった。いずれも「経営情報管理システム」を目指したもので、あらゆる経営データが常時見える化され、場所や時間を問わずに素早い行動を可能にする、理想的なシステムである。昔は絵空事に見えたこのコンセプトも、様々なイノベーションの進展によって部分的には現実のものになりつつある。そのことにいち早く気付き、差異化に直結するシステムをものにすることで“果実”を享受している会社もある。こうした先進企業とそうでない企業との収益力格差は益々広がる。トップの意識改革が何より大事なのである。
情報システム部門/部門長は、ICTイノベーションが進展する時代のうねりを捉え、もっと自信とプライドをもって業務改革やワークスタイルの変革に努力してほしい。自分たちの仕事は、会社の将来を支える「本業」なのだ、という意識を持つことだ。何より重要なことは、ICT以前に、自社の製品/サービスの先にある顧客やマーケット、社会に目を向けることである。顧客の満足や評価を得るために営業はどうあるべきか、サービスをどうサポートすべきか、開発や生産は、といったことだ。
ポイントはアイデアにある。改革マインドの強い部門のキーパーソンとの連携を大事にし、アイデアを具体化するための先進ICTの利用方法を深く考え、積極的な提案をすることだ。これからはクラウドをはじめ、ソフトウェアの機能をインターネット経由で利用するスタイルが拡大する。ソフトウェアやソフトウェア+アドオン、手組みのアプリケーションを組み合わせ、自社の業務領域をカバ-するシステムを構築し、ビジネス全体の生産性アップを実現して、その成果を社内外に広く知らしめることが大切だ。
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