[海外動向]

アドビがクラウド本格参入で事業モデルを変革、買収でHTML対応を加速へ

Adobe MAX 2011(2011年10月1〜5日)米ロサンゼルス/米アドビシステムズ

2011年11月2日(水)IT Leaders編集部

2011年10月、米アドビシステムズは年次カンファレンスを開催。クラウド戦略を明らかにした。これまでのパッケージビジネスから、どのように脱却を図るのか。HTMLとFlashのどちらに軸足を置くのかも注目を集めた。

「Make(Webコンテンツやアプリケーションの作成)」、「Manage(コンテンツ管理)」、「Mobilize(複数機器への対応)、Monetize(収益化)」。米アドビシステムズは、自社がユーザーに提供できる価値を4つのMで表現する。その同社は2011年10月3〜5日、年次カンファレンスである「MAX」を開催した。

Make
指先でのWeb制作を可能に

初日の基調講演では、ケビン・リンチCTOが3000人以上の参加者を前に「Creative Cloud」と呼ぶクラウド戦略を打ち出した(写真1)。4つのMのうち「Make」を革新する取り組みである。アドビ製品で作成したドキュメントや画像ファイルを20GBまで保存・共有できるストレージサービスを中核に、「Apps」「Services」といった要素で構成する(写真2)。「Creative Cloudは、(パッケージベンダーとして歩んできた)アドビの変革における重要なコンポーネントだ」(リンチCTO)。

写真1 ケビン・リンチCTOは初日の基調講演で、アドビのクラウド戦略を語った
写真1 ケビン・リンチCTOは初日の基調講演で、アドビのクラウド戦略を語った
写真2 Creative Cloudは「Apps」「Servi-ces」「Community」の3機能を提供
写真2 Creative Cloudは「Apps」「Servi-ces」「Community」の3機能を提供

Appsでは、iPadやAndroid搭載タブレット向けに開発したデザインツール6種を提供する(表)。2011年11月にAndroid版、2012年初頭にiPad版を提供開始することを明らかにした。「Touch Apps」と呼ぶこれらのツールは、マウスやキーボードではなく指先や専用のスタイラスペンで操作する点が特徴。画像編集やアイデアスケッチ、Webサイトのプロトタイプ作成、プレゼンテーションといった作業をタッチスクリーン上で実施できる。2011年9月からiPad版を先行提供している写真共有ツール「Carousel」と合わせて、タブレットでの制作作業をフルサポートするもくろみだ。

表 アドビが発表したタブレット向け新ツール群。いずれも2011年11月にAndroid端末向けに提供を開始する。iOS向けは2012年初頭を予定
名称 概要
Photoshop Touch 写真の合成や切り抜き、画質調整をタッチ操作で実施できる画像編集ツール
Ideas スタイラスペンや指先を使ってタブレット上にスケッチできる描画ツール
Collage イメージボードと呼ぶ作業領域上にイメージや画像、テキストなどをコラージュできるツール
Proto 長方形を描くとタイトル、×印を描くと画像を配置するなど、ジェスチャーでWebサイトのプロトタイプを作成できるツール
Debut PhotoshopやIllustratorで作成したドキュメントをタブレット上に表示するプレゼンテーションツール
Kuler Webサイトの配色パターンを作成、管理、共有するツール

将来は、PhotoshopやInDesignなど同社の看板であるデスクトップツールもAppsに組み込む。これにより、Web開発者は成果物をクラウド上で一括管理し、デバイスの垣根を越えて自由に利用・共有できるようになる。デスクトップPCで作成したPhotoshopのデータをタブレット側のTouch Appsで編集する、あるいはその逆といったことである。

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