[青木顕子のスウェーデンIT通信]

“ソーシャルトラベル”の台頭で、旅行ガイドブックは過去のものに?

青木顕子のスウェーデンIT通信 Vol.14

2011年11月9日(水)青木 顕子

夏時間から冬時間に切り替わり、日がぐっと短くなる。ゆっくりと昇る朝日を眺めながら、長く暗い冬の到来に少しずつ気持ちを準備する──。お決まりのように、太陽を求めてヨーロッパ南部を目指すチャーター旅行が人気となるこの季節、スウェーデンで注目されるソーシャルトラベルの話題をお伝えしよう。

旅の計画もソーシャルメディアを活用

スウェーデンにおいても、ソーシャルメディアは急速に社会に広がりつつある。とりわけホットな市場の1つが「旅行」だ。旅行の準備をする時、旅の便りをしたためたり記録を残したりする時などに、およそ半数の人がソーシャルメディアを活用しているという。

調査会社、Kairos Futures for Parks and Resortsの発表が興味深い。同社の調べによると、およそ44%のスウェーデン人が、旅行期間中または帰国後に写真やビデオクリップをソーシャルメディアにアップロードしている。Eメールへの添付で知人と共有する(26%)という人もいるが、Facebook(22%)や、ブログやTwitter(7%)など、ソーシャルの存在感は確実に増している。まだ2パーセントと少数だが、旅の記録を出発前からスタートさせるというヘビーユーザーも出てきている。

こうしたニーズへの対応に、旅行業界も様々な手を打ち始めた。スウェーデンでは最近、「ソーシャルトラベルサービス」が話題を呼んでいる。ほんの一部ではあるが、以下に代表的なサイトを紹介しよう。

これらのサービスを利用すると、自分が常用しているソーシャルメディアと連携させ、ブログや写真、ビデオを介して旅行体験を共有できる。出発前には、必要な情報やアドバイスを得て、納得のいく旅の計画を練ることもできる。

自分が直接知らない人が書いたガイドブックではなく、信頼の置けるソースから得られる情報、それもほとんどが実体験に裏打ちされた情報を参照できるという点が魅力だ。さらに、ソーシャル上でつながりを持つ人々が今、どこに出かけているかも分かる仕組みになっている。つまり、旅行に出かけた先で知人と合流するといったことも可能になる。現地での楽しみ方が、ぐっと広がるわけである。

こうした新しいタイプのサービスは、お決まりの観光コースではなく自分達なりの旅を望むスウェーデン人には打って付けで、まさに今、人気が急上昇している。

そんな中でも注目株は、2008年にスタートしたAirbnbだ。旅行客用の大型ホテルではなく、現地の民間人とネットで直接コンタクトをとり、世界192カ国の10万部屋の中から、一定期間だけ個人の部屋やアパートを借りられることを売りにしている。

Airbnbの広報部長、エミリー・ジョフリオン氏は、「宿泊料金の割安感だけではなく、地元の住宅街に泊まって現地の生活に根付いた食料品店やバー、レストランを利用できる点が何よりも魅力だ」とアピールする。この夏の利用数は200泊を記録した。ユーザーは、時間的余裕のある年配層のみならず、子供のいる家族や、ビジネス客にまで広がりをみせているという。

確か日本でも一時期、農村地域の民家で宿泊できる旅プランが話題になったと記憶している。大型ホテルの宿泊では体験できない、地元の人々との触れ合いを求める動きは、世界的な傾向なのかもしれない。

便利なスマートフォン、そしてキメ細かい配慮の行き届いたソーシャルサービスが拡大すれば、ガイドブックを片手に観光地を巡るという往年のスタイルを「過去のもの」に追いやることになるかもしれない。

ふと、年初にお伝えしたスウェーデン政府のIT政策を思い出す。全ての人が、ITの進歩、デジタル社会のメリットを享受できる環境・仕組み作りを目指すというものだ。キーワードは「全ての人」。ソーシャルメディアが勢いを増す現在、既存のサービスや情報がどんどんデジタル化されている。その一方では、インターネットを利用できない“情報弱者”の層が、今なお存在する事実を忘れてはならない気がする。

<参照:Svenska Dagbladet>

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