[製品サーベイ]

ファイル配信/更新などを集中管理、オフィス文書を「スマートに」持ち歩く

スマートデバイス向け文書管理/配信ソリューションサーベイ

2011年11月21日(月)折川 忠弘(IT Leaders編集部)

iPadなどの大型タッチディスプレイを備えた「スマートデバイス」を導入する事例が増えている。多くの企業の目的の1つは、Office文書や電子カタログなどのファイルを仕事の現場に携行すること。これを支援する製品/サービスの最新動向を整理する。

 スマートデバイスを導入する企業が相次いでいる。全日本空輸(ANA)グループは2011年9月、全客室乗務員6000人にiPadを支給することを発表。業務マニュアルの配信や教育訓練の実施といった用途での活用を見込む。アメリカン航空も、機内サービスの向上を目的にAndroid搭載タブレット端末を6000台導入することを発表済みだ。

 医療現場での導入も進む。共立製薬やエーザイは医薬情報担当者(MR)にiPadを携帯させ、最新の医療情報を顧客に提供する体制を整備した。そのほかコクヨやAIGエジソン生命保険が営業部門にiPadを試験導入するなど、事例は枚挙に暇がない。

 直感的な使いやすさ、持ち運びが楽な形状や重さ、実用レベルになったバッテリー駆動時間…。様々な観点からスマートデバイスは今、ノートPCに代わる“本格的なモバイル端末”として期待を集めている。

 メールのチェックから基幹業務システムの端末までと様々な用途が想定されるが、ベーシックなニーズとしてはプレゼン資料や商品カタログなど「社内文書を持ち歩きたい」という声が高い。商品の数や入れ替えが多く、分厚い紙のカタログを頻繁に作っていた企業ならば、制作費を大幅に抑える一方で、常に最新版を現場に行き渡らせられるといった効果を見込める。

 こうしたニーズに応えるものとして、スマートデバイス向け「文書管理/配信ソリューション」の選択肢が増えてきた。主要な製品の概要を紹介する。

端末ごとに表示を最適化、公開期間を制限可能に

 スマートデバイスを対象とした文書管理/配信の一般的な仕組みを図1に示す。多くの製品/サービスは、(1)コンテンツ(文書ファイル)の登録や配信を管理するサーバーソフトと、(2)コンテンツを表示するために端末側に導入する専用アプリ、で構成する。当初は社内に管理サーバーを設置するオンプレミス型が多かったが、最近はクラウド型サービスも増えている。

図1 一般的なスマートデバイス向け文書管理/配信ソリューションの仕組み
図1:一般的なスマートデバイス向け文書管理/配信ソリューションの仕組み

 サーバー上の文書ファイルを、スマートデバイスに最適化して「転送」するのが基本的な考え方だ。オンラインでサーバー上のファイルを逐次参照する方法だと、Wi-Fi環境がなかったり3G回線がつながらなかったりという可能性があるからだ。例えばユーザーがオフィスに戻り、端末が確実にネットワークに接続されているタイミングなどにファイルを転送する。

 企業がスマートデバイスで扱いたいコンテンツとしては、ワードやエクセルといったOfficeソフトのファイルが筆頭に挙がる。ただしスマートデバイスの多くはOfficeソフトを内蔵していないのに加え、画面サイズもまちまちで、そのままでは適正に表示できない。そこでネイティブのファイル形式ではなく、PDFあるいは独自形式に変換した上で端末に転送する方法が主流だ。

 サーバー側には、ファイルの転送(更新)日時や有効期間などをスケジューリングする機能が備わる。これにより、新商品の発売日に合わせてカタログを最新版に切り替える、プロジェクト期間限定で参考資料を配付するといったことが可能となる。

 実際に利用する際には、(1)ユーザー自身がファイルをサーバーに登録する、(2)管理者が一括してファイルをサーバーに登録する、といった運用を企業のニーズに応じて選択できる。

複数ファイルの扱いを簡便にする機能が進化

 スマートデバイスを携帯する営業員が、新商品の概要を顧客先で説明するシーンを想定してみよう。プレゼン資料、外観(写真)、操作方法(動画)、表形式の価格リスト…。現場では、様々なタイプの文書ファイルを探し出さなければならない。あらかじめフォルダに分類しておくのが通例で、ほとんどの製品/サービスは階層構造の管理体系をサポートしている。

 ただし、複数のファイルのオープン/クローズを繰り返すのは、いささか“スマートさ”に欠ける。そこで最近は、一群のファイルを取りまとめ、必要なものを次々に表示できるようにする工夫が盛り込まれ始めた。フォトアルバムのような綺麗な台紙を用意し、各ファイルのサムネイルを一覧表示しておくといったアプローチだ。

図2 インフォテリア「Handbook」はサムネイルの大きさや壁紙をカスタマイズし、自社の仕様に合わせられる
図2 インフォテリア「Handbook」はサムネイルの大きさや壁紙をカスタマイズし、自社の仕様に合わせられる

 代表例となるのがインフォテリアの「Handbook」(図2)。ユーザー(あるいは管理者)は、マウスのドラッグ&ドロップ操作で簡単に必要ファイルを取りまとめることができる。自由にレイアウトできるアルバムに貼り込んでいく感覚だ。ボリュームが多い時には目次を設けることもできる。作業が完了した時点でサーバー上で「公開」の設定をすれば、ただちにスマートデバイスで閲覧できる形式に最適化し配信される。

 「ユーザーが必要なファイルに直感的にたどり着けるのはもちろんのこと、プレゼンの場面では相手の関心を惹き付けたまま様々なファイルを表示できる」(同社執行役員 マーケティング/プロダクトマネージメント/事業開発担当 藤縄智春氏)。そのほか、選択方式の設問を設ける機能も盛り込んでおり、社内研修支援などの新規用途の開拓を図る。すでに100社以上のユーザーを獲得しているという。

 エージェンテックの「Abook」は、PDFファイルに画像や動画、音声ファイルなどを埋め込めるオーサリングツールを用意。複数ファイルを1つのマルチメディアコンテンツとして配信する機能を備える。プレゼン用のPDFファイルを開くと同時にBGMを自動再生するといった使い方ができる。日本デジタルオフィスの「DO!Cat」は、エクスプローラ風のファイル操作画面を用意。フォルダのツリー構造やサムネイル表示などを切り替えながら、ユーザーが必要なファイルを探しやすくしている。

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