[市場動向]

企業利用に広がるスマートデバイス─導入環境が整って、広がる企業利用、豊かな発想力で未開の用途も探る

スマートデバイスのすべて Part1

2012年1月10日(火)栗原 雅(IT Leaders編集部)

消費者向けに広がった製品/サービスが企業ITの進化を加速させる「コンシューマライゼーション」。 急先鋒にあるテクノロジーの1つが、米アップルの「iPad」に代表されるスマートデバイスである。 セキュリティ面や開発面で企業が導入するための環境は整い、2012年以降、爆発的な広がりが見込まれる。 豊かな発想力で臨めば、今までのITでは過不足があった業務の革新や、斬新な用途を切り拓ける可能性が出てきた。

 午前9時、大手建設会社の高岡徹(仮名)は成田空港で飛行機に飛び乗った。行き先はベトナム・ホーチミン。当地の政府系企業と共同開発する大規模工業団地の打ち合わせが目的である。飛行機が安定飛行に入ると高岡はカバンからスマートデバイスを取り出し、工業団地の設計図やパース図、説明資料をサッと“広げ”、念入りに最終チェックを始めた。

 「ここはページを分けたうえで内容をブラッシュアップしたい」。高岡はそうつぶやき、PDF形式の説明資料を指先でなぞるようにしてマーカー線を引き、修正方針を書き込んだ。そして定刻の午後2時半にホーチミンに到着すると再びスマートデバイスを取り出し、VPNを介して社内SNSでプロジェクトメンバーに修正を指示。「1時間半後に会議が始まるから、それまでに頼む」。

 顧客企業の会議室で起動したスマートデバイスに並んだ説明資料のアイコンには、更新済みを示す「New」のマークが付いていた。指先で画面をタッチして資料のページを繰りながら説明を終え、予約していたホテルにチェックインした高岡は早速スマートデバイスのビデオ会議ソフトを起動。日本で待つメンバーに初日の会議の無事終了を伝えた──。

 これは架空のシナリオだが、今この瞬間にも実現可能なテクノロジーはすべてそろっている。

デバイス動向
相次ぐ企業向け製品の登場、3億台規模に拡大する市場

 米アップルの「iPad 2」や米グーグルのOS「Android」を搭載したタブレット機、Windowsが稼働するスレートPCなど、スマートデバイスのラインナップはここ数年で一気に拡充した。スマートデバイスはこれまで主に消費者市場で脚光を浴びていたが、業務利用を想定した製品も充実してきている。消費者向けと同様、携帯電話の3G回線による通信機能やGPS機能を備えるものも多い。

 直近では、例えばパナソニックが2011年11月、防塵・防滴や落下による衝撃への耐性を高めたAndroid搭載機「TOUGHPAD」を発表した。暗号鍵を格納する専用チップの搭載により鍵の改ざんを防止したり、約10時間のバッテリ駆動を可能にしてモビリティ性を高めている。同月にNECが発表したAndroid搭載機「LifeTouch B」もSDカードの暗号化機能や防滴機能を持つ。2012年1月から日本ヒューレット・パッカードが売り出すWindows搭載スレートPC「HP Slate 2 Tablet PC」も暗号鍵の専用チップを備え、記憶装置が取り出されても暗号化したファイルやフォルダの内容を解読できないような配慮がなされている。

 企業向け製品の充実も手伝って、スマートデバイスは2012年以降、世界で爆発的に普及しようとしている。矢野経済研究所の予測では、2010年に世界で約2025万台だった出荷数は2012年に1億台を突破し、2017年にはほぼ3億台に達する。MM総研によると国内出荷も2010年の95万台から増え続け、2015年に500万台に迫る見通しだ(図1-2)。

図1-2 スマートデバイスの国内出荷台数の推移(MM総研、2011年6月調べ)
図1-2 スマートデバイスの国内出荷台数の推移(MM総研、2011年6月調べ)
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