目に見えにくいサービスの中身をとらえ、顧客満足に結実させるにはどうしたらよいのか。 サービス品質を左右する要素を理解し、ITの巧みな利活用でプロセスを構築・遂行する取り組みが重要性を増してくる。 川上 潤司(編集部)
すべての産業においてサービス化が加速する─。その時、例えば物販など、これまで手がけてきたビジネスに“プラスアルファ”でサービスを位置付けるのでなく、「顧客への価値を最大化するために自社が採り得る手段は何なのか」を再定義しなければならない。
具体的なアクションに落とし込む際には、どういった視点でビジネスを見つめ直すべきか。王道としての決まった方法論が存在するわけではないが、サービスサイエンスに知見が広いワクコンサルティングの諏訪良武氏への取材をベースに実効性のあるアプローチ法を探ってみる。
まず、目に見えにくいサービスの本質を今一度確認しておきたい。諏訪氏は「人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの“事前期待”に適合するもの」がサービスだと定義する。人がある商品と関わりを持とうとする時には、前もっての期待値がある。それを上回る価値を提供できれば満足や感動につながる一方、期待を裏切れば落胆や怒りへと感情が向く。そこそこのレベルでは顧客に印象づけるのは難しい。
顧客は自社ビジネスに何を期待しているのか
これを踏まえ、2つのことに考えを巡らせてみる。1つは顧客が自社に寄せる期待を明らかにすることだ。「当たり前のように思えるが、実態を明確にとらえている企業は思いのほか少ない」(諏訪氏)。既存顧客のプロフィール、相談窓口に寄せられるクレーム、市場動向の統計値、ソーシャルメディア上の書き込み、POSなどの実績値…。社内外にあるデータを徹底的に分析してみることが、期待値を明確にすることに役立つ。既存データの分析の延長で、顧客が思いもしない新たな期待値を想定することも、もちろん重要だ。
もう1つは、自社が提供する(できる)サービスを整理することだ。ここで、世の中にあるサービスを分類してみると興味深い。製品や食事、場所などを対象とした「モノ提供型」、役立つ知識や専門家によるアドバイスなどの「情報提供型」、安心や利便性といった「快適提供型」などをベースにさらに細分化・体系化できるはずだ。これを基に、自社はどんなサービスの組み合わせでビジネスを展開するのかを再考する。できればビジュアルに図解してみるのがよい。先の「顧客の事前期待」に応えるものであることは当然だ。
自社のサービスの基本的な形が定まれば、標準的なビジネスプロセスを描ける。人によるワークフローだけでなく、モノと連携・一体化したようなプロセスもあるだろう。併せて、このビジネスプロセスを、ITの利活用でどうやって自動化・効率化できるかを検討する。ここでの知恵・工夫の巧拙が、ビジネス遂行の1つの鍵を握る。
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