「次の10年にわたって、事業環境の変化対応し続けられる社内ITを作る」。沖カスタマアドテックが基幹システムを刷新する際に掲げた目標だ。背景には、明確なポリシーがないまま個別に開発してきたがゆえに管理不能になってしまった、周辺システムの“山”があった。同社は次世代システム像をどう描き、実装したのか、プロジェクトメンバーに聞く。聞き手は本誌編集長・田口 潤 Photo:陶山 勉
- 松浦 健豪 氏
- 株式会社沖電気カスタマアドテック ITシステム部 担当部長
- 1990年4月に沖電気工業に入社。情報システム部において基幹系システムの設計・開発に従事する。2008年4月に沖電気カスタマアドテックに出向し、社内システム構築に携わる。同年から参画したOCEANSプロジェクトでは、開発リーダーとして基幹システム刷新を取りまとめた。
- 泉川 和正 氏
- 株式会社沖電気カスタマアドテック ビジネスオペレーションセンタ 部長
- 1980年4月に現在の沖電気カスタマアドテックに入社。金融機器などのカスタマエンジニアを経て、2012年4月より現職、経理・総務の業務支援などを統括する。2008年4月よりOCEANSプロジェクトに参画し、システムの利用者として同プロジェクトに携わり、2010年10月からは、同システムの運用定着を進め、現在は運用での有効活用を進めている。
─ 今日は、2012年5月に全面稼働させた新・基幹システムについて聞きます。まず御社の業務内容を教えてください。
松浦:収益の柱は大きく3つあります。最も大きいのは、親会社である沖電気製のATMやサーバー機の保守サポート。第2は他社製品の保守。3つめは、自社製品の販売と保守です。
─ 現在の顧客数は?
泉川:約1万2000ユーザーを、全国250拠点でサポートしています。
─ ATM機器などの保守というわけですね。それではさっそく本題に入ります。今回のプロジェクトはいつごろ、どんな問題意識で始めたんですか。
松浦:本格的にプロジェクトを立ち上げたのは、2008年4月です。旧システムが稼働から10年たち、老朽化していたんですよ。しかし、それ以上に大きかったのは、分散した基幹システムDB間のデータ不整合による弊害です。
─ というと?
松浦:基幹システムが3つに分かれていたんです。まずSAPのERPパッケージで構築した販売・会計・部材管理システム。それから保守依頼の受け付けや保守担当者の割り当てなどを管理するシステムと、顧客情報や契約情報を蓄積するシステムです。後の2つはWindows上で自社開発したものですが、DBは全部別々でした。
─ 3システムを使って、作業受付から請求書発行に至る業務プロセスをカバーしていたんですね。
泉川:その通りです。最初はよかったんですが、年月がたつにつれてひずみが生じてきました。というのも実は、販売・会計システムへのデータ入力を人手で実施していたんです。各拠点の経理担当者が顧客と機器、作業内容などをひも付けて伝票を起こし、システムに登録する形です。
─ とすると入力ミスや遅れが発生することがあった?
泉川:ええ。大事なデータなので定期的にメンテナンスはしていたんですが、どうしても遅れや抜けが生じてしまう。それで少しずつ不整合が増えてしまったんです。
─ 暴論かも知れませんが、日常業務が回っているのなら問題ないのでは。
泉川:そうはいきません。保守サポート業務というのはストック型ビジネスなんです。物を売って終わりではない。契約ごとに毎年更新があり、内容が変わっていきます。
─ そうか、単に新しいデータをどんどんためていくのではなく、既存のデータとの継続性を維持しなければならないんですね。
松浦:はい。ところが、そこがあやしくなっていました。契約上は新しい機器が入っているはずなのに、客先に行ってみたら1つ前のモデルだったというようなことが起きていたんです。複数DB間の不整合が、主力である保守業務の品質や効率に影響する危険があったということです。
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