国内企業におけるデータ管理の実態を探るため、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)はユーザー企業を対象に調査を実施した。データマネジメントを実践する上での課題や管理する組織と人材の現状、データ分析やビッグデータに対する取り組み姿勢などを聞いた。本稿ではその調査結果を紹介する。
「戦略上、ビッグデータは極めて重要。最優先で取り組む」との回答は17.5%。「経営層や事業責任者がコストをかけてデータを管理する必要があると考えている」のは50%強。こうした前向きの回答の一方で、マスターデータの一元管理に関しては社員マスターでさえ実施できているのは75.6%。データ連携では「連結子会社も含め必要なシステム間のデータ連携基盤を整備済み」がわずか7.5%など、遅れも目立つ─。
データマネジメントの普及・啓蒙に携わる日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)が、2012年12月から2013年2月にかけて本誌読者などを対象に実施した調査結果だ。経営・事業とITの融合が進む中、企業におけるデータマネジメントの実態はどうなのか。調査結果の抜粋を報告する。
関心集めるビッグデータ
要員確保に課題も
まず、データに関わるトピックとして関心を集める「ビッグデータ」の調査結果から見ていこう。
ビッグデータに対する姿勢を聞いた結果が図1だ。「経営や事業戦略上、極めて重要であり、最優先で取り組むべきテーマの1つ」との回答が17.5%だったのに対し、「ビッグデータを云々する前に、通常規模のデータの利活用に取り組むべき」は2倍以上の39.7%を占めた。「Web事業者や通信、金融業界向けの話」(10.3%)や「ベンダーなどが話題を盛り上げているだけ」(4.6%)のように、ビッグデータは自社と無関係とする回答も少なくなかった。多くの企業が、冷静にビッグデータを捉えていることが分かる。
次に全回答者に対し、取り組み状況を聞いてみた(図2)。図1から容易に推察されることだが、「特に具体的な取り組みはなく、情報収集、リサーチしている」が43.7%、「当面は取り組む予定がない」が24.1%と、多くが“様子見”。しかし「マーケティング、営業などの領域で取り組みを進めている」と回答した企業は11.2%で1割を超え、「生産、物流、設備管理などの分野で取り組みを進めている」も2.0%あった。これに「その他の分野」(4.3%)と、「試験的に取り組む、あるいは具体的な活用を計画している段階である」(12.4%)を合わせると、3割がビッグデータに対して何らかの取り組みをしていることになる。
では課題は何か。図1でビッグデータを「重要」もしくは「重要なテーマの1つ」と回答した人(158件)に対し聞いた(図3)。最も多かったのが「取り組みに必要なスキルを持った人材の確保が難しい」(31.6%)。これに「様々な情報が錯綜していて、どう取り組むのが正解なのか分かりにくい」(27.8%)、「必要なIT予算を確保しにくい」(17.1%)、「関連の製品やサービスが高価」(12.0%)が続く。
ベンダーやメディアからビッグデータに関する多くの情報が発信される中、その重要性は理解するものの、関連スキルを持った人材の不足や取り組むべきアプローチが見えない悩みが浮かび上がった。図には示していないが、調査ではビッグデータ専任の要員を確保しているかも聞いており、確保しているとの回答は全体の9.8%。我々の想定より多いが、それでもデータ活用に精通する人材の不足は大きな問題だろう。
一方、今回の調査のトピック的な設問として、回答者の勤務先の経営層や事業責任者がデータマネジメントに対して、どんな意識を持っているかも聞いた(図4)。半数強を占めたのが「経営の意思決定や業務効率化のために、コストをかけてデータを管理する必要がある」との回答。率直に言って、これは予想外だった。「データマネジメントは必ずしも売上高の増加に直結するわけではない。経営層や事業責任者の関心は低いのでは」と見ていたからだ。「コストをかけるべきではない」、「問題意識がない」が残り半数近くを占めるが、それでもうれしい誤算である。
社員マスターでも一元管理は75.6%
取引先マスターになるとわずか56.3%
さて、ここからはデータマネジメントの中核である、マスターデータ管理やデータ分析/活用、データ連携基盤などの取り組みを見ていく。
まずはマスターデータ管理の状況から。一口にマスターデータといっても多種多様だが、今回はどんな企業にもある製品や商品マスター、取引先マスター、社員マスターの3つに絞って聞いた。理想は「全社で一元管理」だが、そうしている割合は社員マスターが75.6%、取引先マスターでは56.3%、製品や商品マスターは50.0%に留まった。
このうち製品や商品マスターは、事業部門ごとに管理すれば、必ずしも全社で一元管理する必要はない。取引先マスターも同様と言えなくはないが、こちらは複数の事業部門が同じ取引先を持つケースがあり得る。社員マスターになると、人材管理上もコンプライアンス上も管理を一元化するべきだろう。予想通りではあるが、少し残念な結果である。
マスターデータを管理する上での課題を聞いたのが図6。「マスターデータ管理よりも優先度の高いIT関連業務が多い」(38.2%)、「マスターデータ管理業務を担える適切な人材がいない」(35.6%)、「ROIを説明しにくく、経営層や社内の理解が得られない」(34.5%)、「業務が行えているため、マスターデータ管理のプロジェクトが推進しない」(32.8%)、「管理を現場部門に委ねており、一元化できない」(30.2%)が、トップ5だった。
マスターデータ管理の必要性は認識しつつも、他の業務を優先したり、現場の理解が得られなかったりして取り組めずにいる企業が少なくないわけだ。しかしマスターデータをきちんと管理していなければ業務品質や効率が低下する恐れがある。蓄積したデータの分析や活用でも問題が生じかねない。日本データマネジメント・コンソーシアムとして、この問題には最優先で取り組む必要があると考える。
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