[木内里美の是正勧告]

建設業における究極のサプライチェーンに学べ

2013年5月28日(火)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

筆者は建設業の事業部門で32年間勤務した後にシステム部門に移った。ずっとユーザーの立場で情報システムを考え活用していたので、責任者になって改めて気が付かされたことが少なくない。その1つがSCM(Supply Chain Management:サプライチェーン・マネジメント=供給連鎖管理)である。

製造業や流通業では当たり前の経営概念であり、納期や在庫、仕掛りなどを全体最適化することは、収益向上や顧客満足のために必須の要件とも言える。ITを活用してプロセスを改革する目玉の1つでもある。

ところが建設業ではSCMが語られることはまずない。受注生産型の建設業では現地生産以外は製造業と構造的な変わりはなく、同じ概念で捉えられても良いようなものだが、あまりその概念がないのだ。それは何故かを考えてみた時、ある事実に気がついた。建設業は究極のサプライチェーンを実践しているために、改めてSCMという概念が表出しない、その必要さえないということである。

建設業における調達と手配の妙

筆者が身を以て知る建設業50年弱の歴史をみると、サプライチェーンのプロセスは大きく変わってきている。以前は社内に機材センターがあり、建設機械や作業船舶や大量の仮設材などを管理し、在庫の概念もあった。しかし今では機材センターもないし在庫管理業務もないに等しい。特殊な機械は工事のために都度製作する。汎用的な建設機械はリース会社から借り受け、オペレータも外部から調達する。従って在庫管理といえば、施工に支障を来さない当座の現場在庫だけである。

では現在の建設業のサプライチェーンは、どのようになっているか? 分かりやすく言えば「オンデマンドサプライチェーン」である。工事現場は、すなわち生産現場である。部品にあたる資材やそれを組み立てるための機材、そこで働く人たちも、すべてオンデマンドで調達する。どの時期に何をどれだけ調達するかを調達計画で組み立てる。調達の受け皿は協力会社や専門工事会社あるいはリース会社である。階層構造が実に良く出来ていて、1次から2次へ、3次へと繋がっていく。

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