国家の品格というもの。それを考えると、今の日本は品格の喪失どころではない。品格を失えば世の中は荒んでいく。日本が品格を取り戻すには、日本人に共通する“すぐれたもの”に立ち返る必要がなかろうか。合理主義や拝金主義に流されることなく、長期の視野を国家の品格を取り戻すためには──。
地政学リスクを専門に扱う米国の調査会社、ユーラシアグループが「2025年 世界10大リスク(Top Risks 2025)」を公表した。同社のサイトからダウンロードして入手できる解説文を読むと興味深い。リスクのトップは「Gゼロ世界の混迷」だという(図1)。
Gゼロ世界(G-Zero world)とは、国際秩序を維持する国家集団や世界的なリーダーシップが存在しない状態の世界を表現している。秩序が崩壊し、分断が鮮明になり、国際的なガバナンスなき不安定な状況で、世界大戦が勃発する危険を孕んでいると言われる。
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品格とは何? 国家の品格とは
世界10大リスクのトップ4はすべて米国が絡んでいる。トランプ米大統領が2度目の就任を果たし、2025年1月20日の就任式当日から矢継ぎ早に大統領令にサインした(画面1)。初日にサインした26の大統領令のいくつかにはすでに訴訟が起き、就任関連行事の締めくくりに出席したワシントン大聖堂での礼拝では司教から言動を嗜められたことに対して謝罪を求めたりするなど、一貫して品格が感じられない。極端なナショナリズム思想で品格は落ちていくばかりだ。
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品格が感じられないのは、米国やトランプ大統領だけではない。欧州各国も中国もロシアもリーダーを含めて似たようなものだ。改めて解説することもないが、品格とは、立ち居振る舞いが上品であることだ。品は品質でもあり、気品でもある。品格は人に備わるものばかりではない。国家にも品格がある。
20年も前の2005年、数学者の藤原正彦氏が書籍『国家の品格』を著した。同氏は山岳小説などで知られた作家、新田次郎氏の次男であり、エッセイに長けている。改めてこの本を読んでみて驚いた。20年前の日本が当時、すでに国家の品格を喪失していたのである。その状況は今でも何も変わっていないどころか、悪化の一途をたどっている。
●Next:日本はいつから品格を失い始めたのだろうか?
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