IT関係者が情報システムの安全を祈願するために参拝する神社やお寺がある。デジタルと神の加護を結びつける日本人の信仰心を象徴するものと言える。しかしながら、不慮のシステム停止やゼロデイ攻撃など、人知を超えたトラブルに遭遇するリスクが年々高まる中、神頼り・神頼みではデジタル社会を勝ち抜くことは難しい。日本が「デジタル敗戦国」と揶揄される状況から脱却するのに今、何が足りないのか。
「ITと神様」を象徴する神田明神と電電宮
初詣は日本の正月における恒例行事である。年が改まって気持ちも新たに過年の感謝を伝え、新年の無病息災など安寧を願って祈願し、社務所ではお守りや破魔矢を求めたり御神籤を引いたりして今年の吉凶を占う。宗教文化の強くない日本では、神道・仏教の区別もなく神社や寺院に参拝する。宗教行事というよりは正月の風習に近いと言えるだろう。
そんな神社仏閣のなかに、IT関係者がこぞって参拝する神社が東西にある。東は「神田明神」の通称で知られる神田神社である。東京・外神田にあるこの神社は商売繁盛に霊験があるとされ、初詣では企業人の参拝が目立って多い。ここを訪れるIT関係者は情報システムの安全を願い、「IT情報安全守護」(写真1)を授かって帰る。このお守りをインターネットから初穂料1000円で購入できるところも面白い。
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西は京都・嵐山の「電電宮」である。こちらは法輪寺という寺で、電気・電波を司る祖神として電電宮がある。電電宮のお守りは64GBのMicroSDカード(!)を媒体にしている。初穂料1800円で、中には虚空蔵菩薩の画像データがあって携帯やPCの守り神にする人もいるようである(写真2)。他に「情報安全護符」というシールもあるそうだ。
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他にも雷神を祀る寺社は全国にあるようだが、東西のこの2つが特に知られていて、IT関係者の参拝が多い。デジタルと神のご加護はあまり関係なさそうだが、ITシステムではシステムダウンやサイバーアタックなど人知が及ばないトラブルに見舞われることがあるし、構築時のプロジェクトにおいても、予期せぬ障害が発生したりする。神に願いたくなる気持ちがよく表れている。
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