2020年を見据えた「グローバル企業のIT戦略」を取り上げる本連載。IT戦略における日本と世界の差異を見極めるための観点として、第1回はクラウド市場(マーケット)を取り上げた。その他の観点には、「スケールの差」や「ITのとらえ方の違い」「専門性への取り組み」「国民性」「組織」などがある。今回は日本と海外の間にある「スケールの差」を考えてみる。端的に言えば、そこには極端なほどに異なる規模感が存在する。
スケールの差に触れる前に、今一度、グローバル企業の定義を考えてみたい。国家が経済成長するためには、「人口」「技術」「貯蓄」「起業家精神」そして「何かが欠乏していること」の5つの要素が必要だとされる。企業も同様に、成長のための原動力は、「人」「もの」「金」「起業家精神」と「何かが欠乏していること」である。最初の4つは容易に思いつくが、最後の1つが厄介だ。
海外の企業は、最後の「欠乏しているものは何か?」を模索するためにグローバル化を目指している。そのために、英語を公用語とし、多国籍でビジネスを展開し、多国籍の社員を採用し、社員をバイリンガルになるよう教育し、M&A(企業の統合・買収)などを実施するのに十分な資金力を得ようとする。これらに加えて彼らが必要としているのが次世代に向けたIT戦略である。
この次世代に向けたIT戦略において、日本と海外の取り組み姿勢の違いが、しばしば話題に上る。その要因の一つが、今回取り上げる「スケールの差」であることは間違いない。以下では、(1)IT投資とデータセンターの規模、(2)仮想マシンの数、(3)クラウド導入率、(4)コスト削減の感覚、(5)企業数の5項目をみてみよう。
(1)IT投資とデータセンターの規模の差
米Googleが持つIT資産(サーバー資産)をご存じだろうか?公表されているデータによると、129億1200万ドルであり、1ドル=100円で換算すれば、1兆2912億円にもなる。四半期に、その1割以上に相当する、16億1100万ドル(1611億円)を買い足している。
米MicrosoftのIT資産は、99億9100万ドル(9991億円)で、四半期にGoogleを上回る17億9400万ドル(1794億円)を買い足した。なんと、GoogleとMicrosoftの2社で四半期に34億ドル(3400億円)超をITに投資したことになる。
米FacebookのIT資産も25億3300万ドル(2533億円)で、同じく四半期に3億2700万ドル(327億円)を使っている。日本企業とは桁違いのIT投資を続けているわけだ。米Amazon.comのIT投資額は、ネット通販の競合相手である米BestBuyや米Targetと比べると、なんと5倍も多い。
こうした企業のIT投資を単純にサーバー台数に換算してみると、Googleは300万台のサーバーを所有していることになる。こうした企業では、1人の管理者が1万5000台以上のサーバーを管理しなければならないのもうなずける。IaaS(Infrastructure as a Service)で有名な米RackSpaceは、四半期で4762台(1日当り50台)のサーバーを購入しているが、Googleなどと比較してしまうと、かなり少なく見えてしまう。
かつて、米IBMの初代社長が、「I think there is a world market for about five computers.(全世界が必要とするコンピュータは5台だけ)」と語っているが、それが現実味を帯びてきた。Google、Amazon、Microsoft、Facebook、そして米Yahoo!の5社による新規のIT投資だけでも、世界のIT投資全体の20%程度になっている。そして今後も、その割合が増え集約が進むと思われる。
最近、ビッグデータやデータアナリストの文脈からか、統計学や数学を用いた分析が流行だが、集中するものが、完全数の一つである「6」に近づいているようだ。上記の5社に加えた、もう1社がどこになるか、とても興味深いところだ。
ちなみに、完全数とは、その数字の約数をすべて足すと、その数字になる数のことである。例えば、6の約数は、「1、2、3」であるが、これらを足す(1+2+3)と6になる。6以降は、28、496、8128が完全数だ。人類や宇宙にとって意味のある数字とされ、超弦理論(超ひも理論とも言う)でも、496は意味のある数字である。
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