[技術解説]

クラウドストレージを使いこなす今時のツール、キーワードは「手軽、高性能、安全・安心」

2014年1月23日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

ストレージシステムを自社導入するのに比べると単価が安く、容量の増減が極めて容易、運用を事業者任せにできるといった特徴があるクラウドストレージ。特に大量データのバックアップやBCP/DRのためのアーカイブ用途に向くが、実際に利用しようとすると問題もある。

既存システムからは「ファイルサーバー」に見える

 すでに書いたことと多少重複するが、同社の松下悟社長によると、クラウドストレージを一般企業が使う上でネックになるのは下記になる。

  1.  NFSやCIFSのような企業ITで一般的な手順ではなく、REST APIを使う必要があるものが大半
  2.  インターネットを経由するためバックアップなどの用途で使う場合でも性能に不満が出る場合がある
  3.  クラウドストレージはデータが消失しない点では“イレブンナイン”(99.9999999%)と高い信頼性がある半面、データを取り出す場合のそれは“スリーナイン”(99.9%)程度になってしまう
  4.  米国のクラウド事業者のサービスを使う場合、パトリオット法などの影響を受ける恐れがある。例えばすべてのデータを米FBIなど当局に押収されるリスクがある

 まとめると、アクセス手段、性能、セキュリティの3点だ。同社のCSCでは、NFSやCIFSとREST APIを変換することで、まずアクセス手段のネックを解消する。「CSCはほかのシステムからは最大エクサバイトの容量を持つファイルサーバーに見えます。NFSやCIFSといった一般的な手段でアクセスできるわけです。CSCを使えば、REST APIを意識する必要がありません」(松下氏、図)。

図:CSCを使えば、REST APIを意識する必要がない

 性能問題に対してはどうか。CSCはローカルにキャッシュを備えているので、通常はLAN回線のスピードでアクセスできるという。セキュリティに関しても工夫している。設定によるが、CSCはデータを圧縮して分割し、クラウドストレージに書き込む際に暗号化し、さらに分割したデータを複数のクラウドストレージに分散配置できる。「暗号化と分散配置によって万一、どこかの事業者のディスクが押収、あるいは攻撃されても、すべてのデータが見えてしまう事態を避けられます」(松下氏)。

 このほか、電源断があってもデータの書き込み履歴により不整合を排除するジャーナルファイルシステムを採用する、既存システムからクラウドへの書き込み時にACID(原子性、一貫性、独立性、永続性)を維持する、MD5ハッシュによるデータ破損チェックなどの機能も備える。FTPやiSCSIインタフェースもサポートする。クラウドストレージを一般のストレージと同等に使えるようにするために、なかなかよく工夫された製品と言えるだろう。

 価格はどうか? CSCには、中小企業向けのバックアップ機能付きファイルサーバー用途を想定したSOHO Edition、企業のバックアップストレージに向くStandard Edition、大企業向けの災害対策向けの Enterprise Editionがあり、価格はStandard Edition買取の場合で19万8000円から(ほかに3万9800円/年のサポート料が必要)。クラウド・ストレージの利用料は別途かかるが、これでAmazonS3やGoogle、ニフティクラウドやIIJ GIOなど国内外のクラウド・ストレージを使いこなせるようになる。

 機能面では、ほかのStorageboxやCloud Gatewayも同様。CSCはハードウェアアプライアンスと、仮想マシンイメージによるソフトウェアアプライアンスがあるが、Storageboxはハードウエアアプライアンスのみ、Cloud Gatewayはソフトウェアといった違いがある程度だ。個人/消費者としてDropBoxやSkyDriveを使うのが一般的になった今、企業もこうしたツールを使ってクラウドストレージを活用するべきかも知れない。

関連キーワード

クラウドストレージ / NFS / CIFS / ACID

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