ストレージのクラウドサービスを手がける米Bitcasaがユーザー数を伸ばしているという。2014年第1四半期には、企業向けサービスも開始する。米Dropboxなど先行するストレージ・サービス事業者が多い中で、どう差異化を図っているのか。ブライアン・タペッチCEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)に、Bitcasaの仕組みや企業向けサービスの内容などについて聞いた。(聞き手は志度 昌宏=ITLeades編集部)
――競業他社が先行する中で、Bitcasaの差異化点は何か。
「モバイル・ファースト(Mobile First)」でサービスを設計していることである。当社は2年前に起業したが、競合他社は5年から15年も前に起業している。当時は、モバイル・ファーストという考え方は全くなかったか、今日ほどには浸透していなかった。結果的に、現在のモバイル環境での使い勝手が大きく違ってくる。
具体的には、競合他社の仕組みでは、クラウド上に保存したデータを複数のデバイスにコピーすることで、どのデバイスからもデータが参照できるようにしている。Bitcasaは、データはクラウド上に1つしか存在せず、それを複数のデバイスから必要なときにアクセスする仕組みだ。
各デバイスが搭載しているディスク容量に制限されることなく、クラウドを手元のデバイスのディスクと同じ感覚で利用できる。これが、Bitcasaのサービスを「バーチャル・ハードディスク」と呼ぶ理由である。
――その仕組みだとオンラインが前提になり、オフライン環境では利用できなくなる。
モバイル・ファーストだからオンライン環境を前提にしている。だが、必要なデータをデバイス側に保存することもできる。オフライン環境に移動することが予想されるのなら、必要なデータをダウンロードしておけば良い。
――オンライン・ストレージに対しては、セキュリティ面で不安を抱く層が少なくない。
当然ながら、プライバシーとセキュリティの確保には技術的な手を打ってある。まずBitcasaの基本的な仕組みを説明したい。大容量ファイルをクラウドにアップロードすることをイメージして欲しい。
Bitcasaのユーザーは専用のアプリケーションをインストールする。この専用アプリを使ってデータをクラウドとやり取りする。アップロード時はまず、大容量ファイルを「ブロック」と呼ぶ小さなデータに分割し、ブロック1つひとつを暗号化する。ここまではデバイス側で実施し、暗号化されたブロックをクラウド上のストレージに保管する。
この時、元のファイルがどんなブロックからなっているかを記録した「マニフェスト」と呼ぶファイルを作成する。マニフェストは、ユーザーごとの暗号キーで暗号化してクラウド上で管理する。
クラウド上にあるブロックは、暗号化されていて、かつバラバラに保管されているので、ファイルの中身は、我々Bitcasaですら見られない。全ブロックとマニフェスト、そしてユーザーの暗号キーがそろって初めてデータは復元できる。
最近は、NSA(National Security Agency:米国家安全保障局)がクラウド事業者などにデータの提出を求める動きが話題になっている。Bitcasaが管理するデータは、たとえNSAにデータを提出しても、すぐには内容まで把握できないだろう。NSAだからブロックやマニフェストの復号までは成し遂げるだろうが、ユーザーとのひも付けが相当に困難だからだ。
――暗号化した大量のデータをやり取りするとネットワークの遅延が気になる。
アクセスビリティにも配慮している。利用できるデバイスやOS(基本ソフト)を問わないだけでなく、良く利用するデータはユーザーの所在に近い場所に配置する仕組みも実現している。これにより、世界各地にあるデータセンターを組み合わせ、効率よく利用してサービス料金を下げながらも、利便性は損なわれない。
プライバシーとセキュリティと確保、高いアクセスビリティの提供、そして効率的なストレージを安価に提供できること。これら3つがBitcasaと競合サービスとの大きな差異化点になっている。
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