今や、モバイル活用は企業ITの最重要テーマの1つ。しかし、モバイルアプリの開発には全く土地勘がないという読者も多いのでは。分からないことは先達に尋ねるのが一番だ。本連載では、ニフティ、はてな、GREEでコンシューマ向けサービス開発の最前線に立ってきた伊藤直也氏に、モバイルアプリ開発の定石を聞く。(緒方 啓吾=IT Leaders編集部/監修:伊藤直也)
OSが提供するガイドラインやフレームワークに準拠すべし
UIデザインと聞くと、「難しいそう」「センスが必要なのではないか」と感じる人も多いだろう。確かに、UIデザインは決して簡単ではない。熟練したアプリ開発者でも、油断すると使い勝手の悪いものを作ってしまう。しかし、グラフィックデザインと比べると、テクニカルな側面が強い。本格的に勉強すれば、半年ほどである程度の知識は身に付く。
また、実際の開発では、iOSやAndroidが提供しているガイドラインに従う。ガイドラインは、UIのあるべき姿をまとめている。例えば、「ボタンやチェックリストなどの部品をどういう時に使うべきか」「リストからアイテムを選んだとき、どういった画面遷移をするべきか」といった具合だ。目を通しておけば、変なアプリを作らなくて済む。
ちなみに、iOSはUIを開発するためのライブラリ「UIKit Framework」を用意している。UIKitは、開発者が適切なUI設計をするよう、ボタンを配置できる場所や、画面遷移のパターンを限定している。自然とiOSらしいアプリができあがる仕掛けだ。
実際の開発では、アプリのUIデザインが最適かどうか、開発者が1画面、1ボタンずつ丹念に確認していく。アプリの開発時間の8割はUIの確認と最適化に費やすといっても過言ではない。
ちなみに、UIは、要件定義の段階で固める。別記事で述べるとおり、モバイルアプリはプロトタイプ開発と、本開発の2段階を経る。このうち、要件定義にあたるプロトタイプの段階で試行錯誤を繰り返して、UIデザインもあらかた固めてしまう。繰り返すが、UIはモバイルアプリの生命線である。開発の終盤になって、あわてて付け足せるような類のものではない。
監修者プロフィール
伊藤直也(いとう なおや)
ニフティ、はてな(取締役 最高技術責任者)、グリー(ソーシャルメディア統括部長)を経て、2012年4月よりフリーランス。ブログやソーシャルブックマーク、モバイルアプリなど消費者向けサービスの開発・運営に一貫して携わる。現在はWebサービス事業者やシステムインテグレーターへのアドバイザリー業務なども行う。著書に『入門Chef Solo』(Kindle Direct Publishing)『サーバ/インフラを支える技術』『大規模サービス技術入門』(いずれも技術評論社)などがある。
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