書いてあることを理解しながら読み進める。これが一般的な読書スタイルであり、普段私達がそのことを疑問に感じることはない。しかし、「フォトリーディング」の世界では、そんな常識が覆される。現代のビジネスパーソンは限られた時間に多くの書物、文献、資料を読みこなすことが求められている。そんな時、フォトリーディングが役立つ場面は少なくない。
フォトリーディング(Photoreading)とは、神経言語プログラミングおよび加速学習の権威、ポール・R.シーリィ(Paul R.Scheele)氏が開発した読書法である。そういうと難しく聞こえるが、要は、写真を撮るように情報をインプットする速読法の一種だ。方法論が確立されており、認定インストラクターによる講習もあるので、正しい技法を学ぶには受講をお奨めする。筆者はインストラクターでも熟練者でもない一介のフォトリーダーだが、その立場から考えを述べたい。
世の中には様々な速読法があるが、フォトリーディングが特徴的なのは、なんと言っても「理解しないまま情報を詰め込む」点だろう。例えば、全編を通読する時のスピードは1ページ1秒ほど。目の焦点は紙面に合わせず、意図的に外す(いわゆるマジカルアイと同じ)。基本的に周辺視野を使う。だから、ページがめくりにくい後ろの方にくれば、本を逆さまにしても良いそうだ。
もちろん、それだけで書かれた内容を把握することはできない。事前に集中力を高めたり、読後にマインドマップに整理したりといったプロセスが欠かせない。しかし、本の中から必要な情報を取り出したり要約したりするのを、数分の一の時間に短縮できるのは大きい。
一般的な読書法では、時間をかけて左脳で情報処理しながら記憶するが、フォトリーディングのアプローチでは、右脳に画像情報を貯め込んで後で検索する。コンピュータに喩えると、一旦ディスクに格納したデータを必要に応じてロードするようなものだ。認定インストラクターの芝健太氏によれば、左脳の情報流量が40bpsであるのに対し、右脳は1000万bps。右脳を使う方がはるかに高速なのである。
ビジネスシーンで求められる速読
映画『マトリックス』の有名なシーンに、主人公のひとりトリニティーが飛行経験のないヘリコプターの操縦を迫られ、シミュレーション・プログラムをダウンロードすることで瞬時に技術を身に付ける場面がある。芝氏によれば、フォトリーディングの技法はこれと同じだそうである。膨大な情報を瞬時に取り込み、オンデマンドで活用する。
似たようなシーンは、皆さんも経験があるだろう。例えば、上司から膨大な量の資料整理を頼まれ、明日には報告しなければならないといった状況がそれだ。そんな時フォトリーディングを活用すれば、短時間でもある程度内容を咀嚼することができる。もちろん、ビジネス書籍や専門書を多読するのにも有効だ。専門書をおおよそ60冊読み込めば、(知識面では)その分野の専門家になれるとも言われている。
フォトリーディングを活用すれば、読むべきポイントを効率的に探しだすことができる。「ウォーリーを探せ」のように大勢の中から特定の人を探す時、左上から順に一人ずつ確認するやり方の人はまずいないだろう。ざっと全体を眺めてなんとなく当たりをつけるのが普通だ。フォトリーディングはこのプロセスを応用している。全体を俯瞰し、右脳を活性化させることで見当をつけるのだ。
左脳が論理思考なのに対して、右脳は直感力や大局観をつかさどる。だから読書においても、ポイントはどこか、要するに何が書かれているのか、といったことを把握するのに向いている。フォトリーディングは、さしづめ「読む」というより「観る」読書法と言える。
●Next:フォトリーディングの訓練を通じて何が得られるか
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