本連載では、クラウドコンピューティングや、ネットワーク、ビッグデータの動向を取り上げてきた。各回とも、「作る」から「使う」へのシフトの中で、未来動向と、その中で「何を考えなければならないか」をお伝えすること念頭に置いてきた。だが、この1年間だけをみても変化は着々と進んでいる。第12回目となる今回は、1年の動きを振り返りながら、次なるステップへ踏み出すための共通認識を描きたい。
モバイルネットワークは、LTE(Long Term Evolution)の浸透、安価なMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)ネットワークの広がり、無料Wi-Fiサービスのサービスエリアの拡大によって、よりいろいろな場所で高速アクセスが可能になってきた。そのモバイルネットワークを利用したLINEやFacebookなどのSNS(Social Networking Service)やモバイルアプリケーションが急成長を遂げた。
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ネットワークの広がりは、種々の新しいデバイスやセンサーとともに、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)によるサービスや新しい使い方を生み出している(図1)。
クラウドでは、パブリッククラウド分野でAWS(Amazon Web Services)が継続的な成長を続け、それを追うMicrosoft AzureやIBM Softlayerも急速にシェアを拡大している。パブリッククラウドが簡単に使え、コモディティ化していくことで、B2C(Business to Consumer:企業対個人)分野での活用拡大だけでなく、B2B(Business to Business:企業間)での利用も急成長している。クラウドを選択肢の最初に位置付けるクラウドファーストをITの採用方針に掲げる企業も増えてきている。
プライベートクラウド構築のSI事業が伸びている
エンタープライズ市場における、米国のIBMやHP、DELLといったITベンダーの動きを見てみると、プライベートクラウドやハイブリッドクラウドを構築するためのシステムインテグレーション(SI:System Integration)サービスに力を入れていることが見て取れる。
今後のプライベートクラウドの使い方は、コストと、セキュリティ、自由度などによって決まってくる。処理能力をみれば一般的に、パブリッククラウド上で仮想マシンを立ち上げて使うより、高性能サーバーを導入し、その上の仮想マシンを使うほうが安価になる。
従って、継続的に使用し、処理量もダイナミックに変動しない場合は、処理量に見合った仮想マシンをカバーできる能力を持つサーバーを使ってプライベートクラウドを構築したほうがコスト的には優位になる。セキュリティや管理の面でも柔軟性を確保できる。これが、プライベートクラウド増加の1つの要因だ。
しかし処理量がダイナミックに変化しスケーラビリティが必要な場合や、一時的な利用の場合は、パブリッククラウドのほうが向いている。ただストレージは、スケールメリットが効いてくる世界なので、パブリッククラウドのほうが安く利用できる。これらの点を考慮して、プライベートかパブリックかを選択しなければいけない。
テスト段階はパブリッククラウドを使い、安定運用に移ったらプライベートクラウドへ移行するといった使い方も検討すべきだ。もちろん、ハイブリッドという選択肢もある。
プライベートクラウドを選択する場合でも、オンプレミスに置いて自社で構築・運用する選択肢の他に、データセンター事業者が提供するマネージド・プライベートクラウド・ホスティングやプライベートクラウド構築サービスを利用して、「使う」という選択肢を選ぶことも可能である。
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