本連載では、クラウドコンピューティングや、ネットワーク、ビッグデータの動向を取り上げてきた。各回とも、「作る」から「使う」へのシフトの中で、未来動向と、その中で「何を考えなければならないか」をお伝えすること念頭に置いてきた。だが、この1年間だけをみても変化は着々と進んでいる。第12回目となる今回は、1年の動きを振り返りながら、次なるステップへ踏み出すための共通認識を描きたい。
プライベートクラウド用OSとして存在感が高まるOpenStack
プライベートクラウド構築のベースになるクラウドOSの選択肢としてシェアを伸ばしているのがOpenStackである。米国においては、総合ITベンダーだけでなく、OpenStack特化のSI事業者が成長している。OpenStackのユーザー層の伸びが裏付けられる。
米Mirantisは、OpenStackのSI事業者の1社である。代表的なクラウド業者のパブリッククラウドや、大企業のプライベートクラウドの構築で実績を上げ、売上高は3年間で100倍の成長を遂げている。
OpenStackを専業にした技術力を強みに、SLA(Service Level Agreement)や機能など顧客の要求に基づいてOpenStackベースのパブリッククラウドを構築したり、顧客の要求に応じてHadoopなどを組み込んだりしている。
SI過程で開発したコードは、オープンソースとしてOpenStackコミュニティへ展開している。その貢献度は、OpenStackコミュニティの中でもトップ5に入るなど存在感を見せている。Mirantisのような企業の活躍により、先行企業からの要求を採り入れながらOpenStackは進化し続ける。そしてまた、パブリッククラウドやプライベートクラウドのOSとしてOpenStackは浸透を加速させるのだ。
インフラでのもう1つの動きは、SDN(Software Defined Network)によるネットワークの仮想化である。SDNを使ってネットワーク機器を仮想化することで、ネットワーク管理の複雑さや機器調達から解放され、かつアドレスをダイナミックに使えることで多くのメリットが生まれる。クラウド事業者も、BIGLOBEやGMOインターネット、KVHなどがそれぞれSDN対応サービスを発表している。今後、さらに広がっていくだろう。
こうした流れによって、IaaS(Infrastructure as a Service)は、ますますコモディティ化が進む。差異化の中心は、IaaS上のサービスに重点が移っていく。AWSが、より上位のサービスを次々と提供しているのも、そのためだ。OpenStackも、HadoopやDBaaS(DataBase as a Service)の機能が追加されている。
大手企業の動きとしても、前回紹介したように、米GE(General Electric)は「Predix」と呼ぶPaaS(Platform as a Service)を構築し、その上に「Predictivity Solutions」と呼ぶアプリケーション群を構築している。PaaSで共通化のためのプラットフォームを構築し、その上のSaaS(Software as a Service)アプリケーションの利用や、アプリケーションの開発における期間短縮とコスト削減を実現する時代になってきている。
ビッグデータの応用や、製造業におけるIndustrial InternetやIndustry4.0のような総合的な使い方やアプリケーション展開は、アーキテクチャー的に、上述したような流れに基づいている。
IoTが果たす役割も重要だ。IoTのための接続方法やセキュリティの仕組みは、標準化が進むことで、より接続が容易になり、市場は広がっていく。標準化のリーダーシップ獲得に向けて、いくつかの標準化団体も設立された。これらの標準化が進めば、M2M(Machine to Machine)やIoTを応用した機器の保守サービスやLaaS(Lighting as a Service)といった新たなサービスのビジネス化が迅速に構築できるようになる。
「使う」ためのアーキテクチャーでは標準化が不可欠
では、これらの変化の下で、サービスインフラやITインフラを構築する場合には、どういった点を考慮しなければいけないだろうか?
IoTのサービスを例に考えてみよう。サービスのビジネス設計ができたら、どのような構成要素が必要で、それらをどう組み合わせるかの全体のアーキテクチャーを考えなければならない。
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