本連載では、クラウドコンピューティングや、ネットワーク、ビッグデータの動向を取り上げてきた。各回とも、「作る」から「使う」へのシフトの中で、未来動向と、その中で「何を考えなければならないか」をお伝えすること念頭に置いてきた。だが、この1年間だけをみても変化は着々と進んでいる。第12回目となる今回は、1年の動きを振り返りながら、次なるステップへ踏み出すための共通認識を描きたい。
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プラットフォームの構成要素としては、端末・装置/デバイス、ネットワーク(装置/デバイスの場合はIoT接続)、ビッグデータのストレージ、解析や業務アプリケーション、および、これらのプラットフォームとなるクラウドが必要になる(図2)。
アーキテクチャーを考えるとき、どこで差異化するのか、どこまでを「使い」、どこから「作る」のかを決めていかなければならない。IaaSのようなコモディティ化した部分は、「使う」という選択肢を取るべきだ。
全体のアーキテクチャーを設計し、構成部品を決め、それらを組み合わせていく際に必要になるのが、標準化・共通化である。すべてを「作る」のではなく、「使う」のだとすれば、使える構成要素は標準化すべきだ。
標準化なしに、色々なものを選んで「使う」と、運用やスキル、コストの面で課題が発生する。サービス化のためのプラットフォームは、提供開始後も運用し改良を続けていく必要がある。そこでは、要素を組み合わせて利用したほうが、垂直統合によって作ったシステムと比べ、柔軟性を持たせやすく、DevOps(開発と運用の統合)のための環境構築にも貢献できる。
標準化・共通化は、共通プラットフォームに関するスキル/経験が使えることから開発期間の短縮や開発・運用のコスト削減に寄与できる。標準化により検証が終わったコンポーネントを利用すれば、品質やセキュリティを検討するための時間/工数の削減も図れる。
企業内で、標準化・共通化を進めるには、強いリーダーシップを持つ組織が、動向を考慮しながら、かつ継続的な見直しを実施することが重要だ。クラウドなどの進化に追随するためには、ポータビリティを考慮した標準プラットフォームを選んだり、API(Application Programming Interface)を定義したり、さらには標準化だけでなく共通部分の運用や開発に対する支援体制を準備したりする必要がある。
「何をしなければならないか」から考える
インターネットによって、コンピューターとコンピューター、人とコンピューター、人と人、さらに機器とクラウド、機器と機器がつながり、そしてクラウドによって、処理機能やストレージの機能が、よりダイナミックに、かつ簡単に使えるようになってきた。
さらにセンサーによる様々なデータの取得や、ディープラーニングのような認識・理解による知識の習得によって、現実社会はデジタル化され、サイバー空間に再現される。そこでの分析やシミュレーションの結果が現実社会にフィードバックされ、世界に広がっていく。こうした真のビッグデータ時代が訪れ、インターネット革命を越える変化が起ころうとしている。
このような環境下で生き抜いていくためには、未来に向けた動向を習得し、その本質を正しくとらえ、何が可能になるのかを考え、ビジネスへの応用を検討することが重要である。その実現に当たっては、全体のアーキテクチャーや、データの持ち方、アプリケーション開発やセキュリティの方針を明確にし、それらを迅速に実現できるだけの要素技術の共通化を図らなければならない。
世界は既に、「何をしなければならないか」をまず考え、それをクラウドやインターネットを使って、できるだけ迅速に実現することが企業の差異化につながる時代に入っているのである。
●筆者プロフィール
大和敏彦(やまと としひこ)
慶応義塾大学工学部管理工学科卒業後、日本NCRでメインフレームのOS開発を、日本IBMでThinkPadなどの開発および戦略コンサルタントを担当。シスコシステムズではCTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、インターネットビデオやIP電話、新幹線などの列車内インターネット事業の創出を牽引し、代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。その後、ブロードバンドタワー 代表取締役社長としてデータセンタービジネスを、ZTEジャパン CTO兼副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月からITi(アイティアイ)代表取締役。その後リンクバル 社外取締役を経て、2022年1月にアプライド エレクトロニクス 取締役 CTOに就任。大手製造業に対し事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事などを歴任。
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