米IBMは2015年3月31日(現地時間)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)に特化した新部門を設置すると発表した。同社のコンサルタントや研究員、開発者など2000人超を集める。IoT関連データを収集/分析するためのクラウド基盤を構築したり、業界をまたがる連携をうながすエコシステムを構築したりする。そのために、今後4年に30億ドル(約3600億円、1ドル120円換算)を投資する。
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)部門は、同社のAnalytics事業に設置する。スマートフォンやタブレット端末、家電製品や自動車などから生まれる全データの「90%が分析されず活用されていない」(IBM)との観点から、IoTデータを活用するためのクラウド基盤や、種々の仕組みを構築するために必要な要素を持つ企業群との連携を強化する。
具体策として、「IoT Cloud Open Platform for Industries」および「Bluemix IoT Zone」の提供と、「IoT Ecosystem」の構築を挙げる。これらの利用方法については、IBM Digital Operations Consulting Services部隊のコンサルタントが支援するという。
IoT Cloud Open Platform for Industriesは、業種別のIoTソリューションを設計・提供するための分析サービス。例えば、保険会社が自動車の実走行データに基づく保険商品やサービスを開発・提供する際に必要になるクラウドサービスの提供を予定する。
Bluemix IoT Zoneは、同社のPaaS(Platform as a Service)であるBluemix上で、IoT対応アプリケーションを開発・実装するためのサービス。IoT関連データを、よりリアルタイムに読み込んだり、分析したりできるようにする。企業の資産/設備管理やソフトウェアエンジニアリング設計といったミッションクリティカルな業務にIoTのプロセスを追加し自動化や最適化が図れるとする。
IoT Ecosystemは、上記のサービスを使いながらIoT関連サービスを構築する際に必要になる関連製品/サービスを提供する企業群とのパートナーシップである。提携先として、米AT&Tや英ARM、米Semtech、米The Weather Companyなどを挙げる。
AT&Tは、クラウドにおける分析やセキュリティなどを、ARMはIoT対応機器を開発するためのスターターキットを、SemtechはM2M(Machine to Machine)通信技術を、The Weather Companyは10万を超える気象センサーなどを使った天候データを、それぞれ提供する。
IoTのためのクラウド基盤の構築やサービス提供はこれからだが、IBMは既に多数のIoT関連アプリケーションの構築で実績があることを強調している。具体的には、同社が2008年に提唱し始めた「Smarter Planet」や「Smarter Cities」関連の取り組みである。当時から、スマートメーターを使った水道の管理や、ビルにおけるエネルギー消費量の削減、交通機関の運行状況の最適化、警察による犯罪防止活動の支援などをうたってきた。
Smarter Planet/Smarter Citiesは、企業におけるIT投資が一巡し、次のIT適用策として社会や都市に照準を合わせたもの。だがその後のビッグデータやクラウドの普及に続いてIoTが一気に現実味を帯び、多くの企業が自社の事業構造の見直しや新規事業開発に動き出している。IBMにすれば、企業における新たなIT投資に再度、照準を合わせ直したとも言えそうだ。
最近の企業顧客との取り組み例として、独Continentalとの自動車メーカー向けモバイルソリューション開発や、米Cumminsとのエンジンの性能データの収集/伝送、米Whirlpoolとの電化製品を性能と信頼性の向上のための取り組みなどを挙げている。