コンピュータ・リテラシーという言葉がある。ここには、コンピュータやソフトウェアを活用する「ITリテラシー」と、情報を利活用する「情報リテラシー」という2つの要素があり、その本質は異なる故に、仕分けして理解しなければならないはずが、混用されているのが現実だ。これを元凶に、さまざまなツケが今となって露呈しているのである。
多くの企業で社員が皆パソコンを使うようになった1990年代半ば以降、コンピュータ・リテラシーという言葉もよく使われるようになった。リテラシーという言葉は文字(letter)から派生した「書き言葉」を対象にして、読んだり書いたりできる能力として定義付けられたもののようで、コンピュータやメディア・リテラシーのように拡張的にも使われている。つまり何らかのことに関する知識や能力を指しており、定義やフレームワークがきちんと用意されているわけではない。
今やビジネス活動に情報システムを使わないなどということは考えられない。インターネットや情報端末を活用して仕事をしているし、日常生活にも浸透している。社員各人にパソコンが割り当てられるようになった20年以上前、多くの企業は社員に文書作成ソフトや表計算ソフトを教えることから始めた。筆者はこの段階でやるべきリテラシー教育の最初の機会を逃したと感じている。
どういうことか? この分野にはコンピュータやソフトウェアを活用する「ITリテラシー」(ICTリテラシーともいう)と、情報を利活用する「情報リテラシー」の2つの要素がある。これらは本質が異なるので仕分けして理解する必要があるにも関わらず、現実には混用され、渾然と受け止められている。今になってそのツケがいろいろなところに現れているのだ。
リテラシーの欠如が企業に及ぼす影響
ITリテラシーと情報リテラシーの違いを、21世紀型スキルを提案しているATC21Sプロジェクト(http://www.atc21s.org/)の考え方などを参考に整理してみよう。21世紀型スキルではどちらも「働くためのツール」と位置付けている。しかし同じではない。
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