人気映画「Mission:Impossible」における“プロ”の戦いぶりを観ていると、情報システム構築という任務を負った責任者の仕事と重なる部分を多く感じる。もっとも、情報システムの場合は、本稼働をもって完了という訳にはいかない。その利用によって当初計画した業務改善やビジネスの進展などにどれだけ寄与したかに、情報システムの目的はある。本来のミッションというものを今一度、考えてみよう。
筆者が事業部門からシステム部門の統括責任者として異動した時、まず感じたのがミッションの重さだった。建設業なので、当時はそれがないと現場が動かないというほど情報システムはクリティカルではなかったが、その後、工事決裁の仕組みや現場の調達業務支援、プロジェクト共有の情報システム環境を構築してからは、システムが止まると現場が動かなくなっている。今やどの企業においても情報システムへの事業活動依存度は高く、その傾向はますます拡大している。
しかも情報システムは、構築も維持も投資金額が半端ではない。金融業や製造業などに比べると建設業における情報投資の売上金額比率は小さいが、大手建設業の売上金額は相応に大きいから投資金額も大きくなる。必然的に責任は重い。筆者は経営トップの信任を得て大きな金額の決裁権限を与えてもらっていただけに、失敗は許されないというプレッシャーをいつも感じていた。異動当初は、情報システムを手掛けた経験があるわけでもなく勝算も読めない中で、ひたすらミッションの重さを背負ってデザインとプランを考えていた。
プロが戦うミッション・インポッシブル
ミッション・インポッシブルと言えば、アメリカのテレビドラマ「スパイ大作戦」を映画化したタイトル「Mission:Impossible」を思い出す読者も多いだろう。筆者は学生から社会人になる頃に放映されていたスパイ大作戦のファンだった。イーサン・ハントを演じるトム・クルーズ主演で映画化されるようになってからも全シリーズを観ている。最新作の「ローグ・ネイション」は、シナリオも演出も撮影も高度に進化していて素直に楽しめた。この映画が、情報システムの構築プロジェクトとダブってくる。
映画の構成はいつも同じでシンプルだ。まずIMF(Impossible Mission Force:CIAの特殊部隊)のリーダーに指令が届く。リーダーは作戦を練りつつ最適なメンバーをアサインする。そこからはプロが戦う仕事。様々な困難を乗り越え、不可能と思われる任務を次々にこなしてミッションを完遂するストーリーだ。その戦いぶりは訓練を積んだプロの知恵と行動に支えられている。窮地に追い込まれても決して諦めない。
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