グローバル企業において、人材管理は事業遂行に欠かせない手段に位置づけられている。それゆえ、事業部門トップや現場マネジャーが責任と権限を持っている。そこに焦点を合わせた機能を提供するSaaS(Software as a Service)が「Workday」である。以下では、Workdayのサービスを実現しているテクノロジーについて見てみる。
もっとも利益は上げていない。それどころか2014年1月期の1億5330万ドルの損失が、2015年1月期には215億7万ドルへと損失額は拡大した。サブスクリプション(購読)ベースの収入モデルなので、売り上げに見合う支出にできるはずだが、換金可能な資産が19億ドルもある。当面はサービスの機能強化とユーザー獲得を優先する方針だ。
ユーザー数はどうか。2015年5月の米Gartnerのレポート『Seven Ways to Compare the Enterprise HCM Suite 'Big Three』が、WorkdayとOracle、SAPのサービスを比較している。これによるとWorkday HCMは契約数が900社以上あり、うち600社以上が稼働中とされる。
Oracleのサービスは「Oracle HCM Cloud」。Fusion Applicationsの人事/給与/労務管理と、買収したタレントマネジメントのTaleoを組み合わせたソリューションだ。その契約数は700社以上、うち350社以上が稼働中だと米Gartnerのレポートは推計する。もう1つのサービスががSAPの「SucessFactors」。2012年の買収後にSAPは機能拡充を進め、外注先の従業員までを含めた人材管理や給与管理までに対応するHCMソリューションにした。こちらのユーザー数は、それぞれ550社、260社とGartnerは見ている。
OracleやSAPのように既存の顧客ベースを持たないにもかかわらず、少なくともクラウドHCMの分野ではトップだ。しかもWilmington共同社長によると「契約の継続率はおおむね96%で推移している。4%分も、解約と言うよりは、廃業やM&Aで2契約が1契約になるといったことが要因だ」とし、解約がほとんどない。
ちなみにSaaS最大手である米Salesforce.comの継続率は91%。利用企業の絶対数が違うとはいえ96%は評価に値するだろう。なおWorkdayはRising 2015において「HCMの契約数は1062社、うち773社が稼働。Financialは160社、84社が稼働している」と公表している。
料金は非公開だが、「TCOを半分にできる」
SaaSに属するサービスの多くは、利用料金が明確で透明性の高さが特徴だ。しかしWorkdayには当てはまらない。そもそも利用料金を公開していない。人事や財務ソリューションとなれば導入前のコンサルティングや設定に費用がかかるという事情はあるにせよ明確にするべきだろう。
それはともかく、売上高とユーザー数から単純計算してみる。2015年1月期の使用料収入は6億1330万ドル。2014年2月から1年間の利用企業数を控えめに600社と仮定すれば、1社当たり年間約100万ドル(約1億2000万円)になる。「顧客の規模は米IBMや日立製作所のような10万人を超えるグローバル企業から、小さいところは1000人程度」(同)だから、割安と言えるだろう。実際、「オンプレミスで同等のHCMを導入するのに比べるとTCO(総所有コスト)は30〜50%低減できる」(同)と話す。
結局、Workdayの魅力は何なのか。整理すると次のようになる。
(1)HCMに対する造詣の深さ
主な経営メンバー、技術者が以前にPeopleSoftに関わっていた。そのノウハウを元にしながらグローバル企業の人的資産管理に対するニーズを取り込み、さらに人的資産管理と財務管理の統合を実現しつつある。
(2)技術面の先進性
PeopleSoftの経験を生かしつつ、ゼロからアプリケーションを設計。SaaSやクラウドなど2000年代半ばのテクノロジー、およびその後に登場したテクノロジーを急ピッチで取り込んできた。SaaSだからできる単一のソースコードやオブジェクトモデル、インメモリー処理などである。買収した技術がほとんどなく(買収した会社はわずかに4社)、シンプルなアプリケーション構造を維持できていることもある。
(3)顧客ニーズの取り込み
原則として年に2回のペースでアップグレードを実施する。そこにはWorkdayからの提案もあるが、ユーザーからの要求も反映する。利用開始時点では存在しない機能でも、しばらくすると実装される可能性が高い。画面デザインの変更など不要なアップグレードでも使わざるを得ないケースがあるにせよ、進化の速さやアップグレードに伴う負担の少なさはメリットだ。
逆に、国内中心に事業展開する日本企業にとっては採用しにくいように思える。人事部門以上に事業責任者や現場のマネジャーを重視した機能群、カスタマイズができない不自由さといったこと以上に、企業と人の雇用環境や社会風土が異なるからだ。
しかしビジネスのサービス化やグローバル化が進む中で、いつまでも従来の雇用形態を維持できないことも確か。Workdayのようなソリューションがどのように浸透するのか、経営革新の本気度が試される。
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