我が国において、個人・法人を問わず「寄付行為」に対する消極的な姿勢と定着しない実態を痛感している。一時的に話題となって盛り上がることもあるが、いずれも長続きしない。そうした中でネット時代らしい寄付手法が増えてきている。1つはSNSを使ったものであり、もう1つは多くの案件が上がり始めたクラウドファンディングである。
最近Facebookの共同創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグ氏が、娘さん誕生に際して保有する株式の99%を計画的に寄付すると表明して話題になった。時価で5兆5000億円に相当するという。実態は米国の税制度を生かした節税だとか、新たな社会投資であるとか言われてはいるものの、寄付文化の日米の差は歴然としている。日本でそんな話は聞いたことがないのだ。
遅れている日本の寄付文化
NPO法人日本ファンドレイジング協会が発行する「寄付白書2015」によれば、日米の差は金額で37倍、名目GDP比でも7倍以上の差がある。筆者も2つのNPO法人に関わっているが、個人・法人を問わず寄付行為に対する消極的な姿勢と定着しない実態を痛感している。もちろん、そんな日本でも、多くの寄付が寄せられたことがある。1つは2011年の東日本大震災の時だ。5000億円の震災寄付が集まり、2011年の個人寄付総額は初めて1兆円を超えたそうである。2014年には難病への研究支援寄付でアイスバケツ・チャレンジがブームになった。問題なのは継続性がないことだ。震災復興は道半ばだし難病も解決したわけではないが、いずれも今は話題にものぼらなくなった。寄付文化として必要なのは継続性だろう。
日本の個人寄付額の対象先のトップはお布施を除いても宗教関連だそうで、日本赤十字、政治献金と続く。社会貢献投資への個人寄付は欧米に比べて明らかに低い。筆者はその要因を寄付環境が整っていないことによる寄付文化の未成熟ではないかと考えている。ファンドレイザー(プロフェッショナルな資金調達者)が育っていないとか、寄付リテラシーが低いとも言われる。思いを託すためにどこに寄付するのがいいのか、寄付がどのように使われているのか、その成果はどうなのかはよく分からない実態もある。
ネット時代のクラウドファンディング
政府も問題の認識はあり、2014年から「寄付文化の醸成」に向けて実態調査を開始。2015年12月から毎年12月を「寄付月間〜Giving December」として寄付文化の醸成と寄付促進活動の普及啓蒙に取り組んでいる。
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