[市場動向]

パートナーとの協業が生命線、Dell/EMCの統合はシナジーを生む

【Dell Technologiesの研究:パート5】 トップ2人に聞くDell日本法人の課題と展望

2016年11月11日(金)IT Leaders編集部

「PCのDellからITインフラのDellへ」、「直販のDell からパートナーの力を活用したソリューションのDellへ」――2015年8月にDell日本法人のトップに就いた平手智行代表取締役社長と松本光吉執行役員副社長兼パートナー事業本部長は、異口同音にこう語る。それは1年経った今、どこまで実現したのか。Dellにつきまとう、ある種の誤解をどう払拭するのか。2人のトップに聞いた。(聞き手はIT Leaders編集主幹:田口潤)

3四半期でパートナー戦略を刷新

――それはすごいですね。さて平手さんの話にあったパートナー施策に関しては、松本さんにお聞きします。日本HP(現在のHP Enterprise)で長年パートナービジネスを担当していた松本さんから見て、着任当時のDell日本法人にはどんな課題があったのでしょうか。

執行役員副社長兼 パートナー事業本部長 松本光吉 氏

松本 何よりも直販部門とパートナーの交通整理ができていませんでした。パートナーとの競合が頻発し、商談が決まりそうなタイミングで直販が案件をさらってしまうといったことです。これではパートナー満足を高められず、顧客満足にも影響します。そこで2015年8月に経営陣の体制を刷新してから、一気に改革を進めました。

――具体的にはどんなことですか?

松本 最初に着手したのが社内の意識改革です。ビジネスのための交通ルールを示して、“運転マナーを徹底しよう”と号令をかけました。続いてパートナーへの販売施策を強化して情報提供体制なども整備しました。例えば、トレーニング受講やマーケティング支援などに資金を提供するMDF(Marketing Development Fund)を拡充するといったことです。リセラー数も4半期のアクティブリセラーが2000社に増え、パートナー経由の取引は急拡大しています。当然、直販との競合もほぼ解消しました。

 そのうえで製品の広報宣伝活動をテコ入れして、認知度向上を図りました。社内の意識改革からビジネスプロセスの構築、パートナー支援施策の強化、そしてパートナーからの認知や信頼の獲得。このスパイラルを“Dellパートナー・トルネード・エンゲージメント”と呼んでいますが、それが軌道に乗りつつあります。元々、現場の社員は優秀でしたし、パートナーからの期待もありましたから、わずか3四半期に過ぎませんが、随分、変わったと思います。

図2 パートナービジネスの基軸となる「トルネード・エンゲージメント」(Dell提供)

――業績にも表れている?

松本 具体的な数字は言えませんが、売り上げは前年比で急激にアップし、本社からは“ジャパンマジック”と言われました(笑)。不毛な競合を解消したことで利益率も向上しています。もちろん、当社への潜在的な期待がそれだけ大きいこともあります。

パートナー経由でソリューションを提供

――実際、サーバーはPCのように買ってきて電源を入れれば動くわけではありません。サーバーを中心としたソリューションビジネスでは、パートナー経由の方が安心できる面も強いですよね。

松本 まさにそうです。PCは直販とパートナー経由で住み分けすることで、より広い顧客に製品を届けることができます。サーバーやストレージなどの場合、お客様はソリューションを求めていてハードウェアがすべてではありません。だからこそパートナーと協業することに価値があります。

平手 今年3月に米DellはITサービス部門をNTTデータに売却し、あらゆるパートナー企業と連携する体制を整えました。Dell Technologiesになって、旧EMCを含めてITインフラのラインアップ拡充を図りつつ、パートナー企業とお客様が本当に求めている価値を提供できるようになったんです。

――とはいえ、まだやるべきことはありますよね。

松本 改革に向けた取り組みは、まだ発展途上というのが本当のところです。PCのビジネスはすぐに成果に結びつきますが、サーバーの領域ではパートナーの営業やエンジニアの方々の教育が必要です。現在進めていますが、成果が出るには時間がかかります。

平手 日本法人としても体制を強化中です。私たちが着任したときにはパートナー事業部の人員は20数名でしたが今、120名まで増強しました。今後はコンサルタントやテクニカルサポートの人員を増員する計画です。

松本 日本IBMや日本HPなどでパートナービジネスを経験してきたつわものたちを揃えて、強力な布陣を敷こうと考えています。

平手 あらゆる業務プロセスの改善とパートナー戦略の強化がソリューションビジネスへのシフトを成功させる鍵だと考えています。

―― 一方でDellには必ずしも好意的ではないイメージもあります。そのため、そもそも選択肢に上らない可能性もありそうですが、いかがでしょう。

平手 例えば「Dellのコールセンターでは外国人がわけのわからない日本語で対応する」なんていう話のことですよね(笑)。先ほども申し上げたとおり、日本では500名の社員が宮崎のコールセンターで対応に当たっています。このこと1つとっても、誤解されている部分が多いんです。

――正直、PCについては私もそんな印象があります(笑)。

松本 サポート体制についても誤解があるのですが、Dellでは24時間365日、最適な保守サポートを提供するための「グローバルコマンドセンター」を世界6ヵ所に設置しています。Dell日本法人の本社にも設置されており、トラブルの発生状況を常に監視して、保守要員がどこにいるのか、部品はどこにあるのかを把握して、適切な指示を行っています。これによりSLA(サービスレベル・アグリーメント)を順守するのが目的です。

 日々、台風や地震、洪水といった自然災害の状況も踏まえて最適な判断を下すのですが、すべての活動をサービスタグナンバーで把握しているので、確実に対応できます。直販モデルで鍛え上げてきた強みを生かしており、ここまでやっているのはおそらく当社だけです。

平手 製品についてもまだまだ良さが伝わっていません。ただ、あるIT専門誌の顧客満足度調査において2016年、当社はノートPC部門で第1位を獲得しました。本来持っている良さをしっかりアピールできたからだと思います。

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