製造業やサービス業に破壊的な変革をもたらすと言われる3Dプリンター。企業情報システムとの関係は弱いものの、デジタル化を牽引するCIOやITリーダーなら、その動向を押さえておいた方がいい。そこで米Markforgedというベンチャー企業が開発・販売する世界初の炭素繊維で造形できる3Dプリンターを紹介しよう。
工業製品に利用される素材の筆頭は、鉄やアルミニウムなどの金属。だが金属は重いし、金属疲労や腐食(錆)などの問題がある。そこで注目されているのが、炭素繊維(カーボンファイバー)だ。既に、航空機のボディや翼、高性能車の外板パネル、ゴルフクラブのシャフトといった軽さと強度を要求される製品への利用が広がっている。
何よりも、その比重は1.8前後と、7.8である鉄の4分の1以下に過ぎず、アルミの2.7やガラス繊維の2.5よりも軽いという特徴がある。逆に強度は引張強度を比重で割った比強度が鉄の約10倍、引張弾性率を比重で割った比弾性率が鉄の約7倍あり、アルミよりも強靱だ。しかも錆びないし化学的あるいは熱的にも安定している。
難点は加工やリサイクルが難しく、物理的性質が方向によって異なる「異方性」があること。これを克服し、様々な形状の物体を作る−−。こんなテーマに挑戦し、成果を挙げつつあるベンチャー企業が、2013年に設立された米Markforgedという3Dプリンターの専門企業である。
2015年に炭素繊維対応機を世界初で投入
同社は設立2年目の2015年に1号機の「Mark One」を発売。世界初の炭素繊維3Dプリンターとして関心を集めた。同社の試算では、治具のようなものからラジコンカーのパーツまでコストや製造時間を劇的に減らせる。例えば、アルミでの製造と比べ、コストは10分の1以下、製造時間は実質2割減程度だが、配送時間が不要になる。
2016年始めには速度を改善し、使える素材も増やした「Mark Two」を投入。より大きなものを造形できる「Mark X」も発売した。同社は販売台数について、「詳細は言えないが数千台だ。自動車関連や機械部品など様々な企業が採用しており、急ピッチで伸びている。2015年は150%成長だったが、2016年はMark Xなど新機種投入もあったので、それを上回るだろう」(同社のDan Monetteチャネル販売担当ディレクタ)という。
ではMark TwoやMark Xはどんな製品なのか。Mark Twoは大きさ(幅×奥行き×高さ)が320mm × 132mm × 154mmで、レイヤー解像度は0.1mm。Mark Xは大きさが330mm × 250mm × 200mm、レイヤー解像度は0.05mmである。仕様上の違いはあるが、炭素繊維以外にケブラー繊維や耐熱ガラス繊維、ナイロンなどを素材に使用できるという特徴は同じ。軽さと強度が求められるドローンの躯体をはじめ、機械部品や治具、工具などを製造できる(写真1)。
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