「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システムの取り込みの重要性に鑑みて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見を共有し相互に支援しているコミュニティです。IT Leadersは、その趣旨に賛同し、オブザーバとして参加しています。同倶楽部のメンバーによるリレーコラムの転載許可をいただきました。順次、ご紹介していきます。今回は、公文教育研究会の鈴木康宏氏のオピニオンです。
皆様、あけましておめでとうございます。
お正月といえば、実家に帰り、おせち料理やお雑煮を食べ、お屠蘇を飲み、初詣に出かけるという日本的な風景が思い浮かびます。普段は宗教を意識していないのに、この時ばかりは神社やお寺に出かける人が多いようです。
日本人は、知らず知らずのうちに日本的なものが日々の暮らしに取り入れられており、子供の頃から、「そんなことをしたらバチが当たる」とか、「閻魔大王に舌を抜かれる」だとか、「お天道様に顔向けできない」といった言葉で八百万の神々に敬意を払うことを自然に身につけてきています。諸外国のように宗教が表に出るわけではありませんが、それ以上に日本人らしさが日々の生活の中に刻まれているとも言えるのではないでしょうか?
「困ったときはお互い様」という風土もあります。東日本大震災では、物資の奪い合いもなく順番を守る被災者を見て、海外の人々が驚いたという話が有名になりました。日本ではごく普通の感覚でも、海外では非常に驚きの感覚で、とらえられるようです。裏を返せば「日本発」のものは海外に驚きを持って受け入れられる可能性も高いということになります。
私は、KUMONの基幹システムを導入するために、ここ4年間、1年の3分の1は海外に出かけ、現地の方々と接してきました。もちろん色々な意味で大変でしたが、日本で生まれた「公文式」が世界に浸透した現場を間近で見るのは大きな喜びでした。その都度、我々はもっと「日本」という国に自信を持っていいし、もっとアピールすべきとも感じました。
公文式が海外に浸透している理由は「子どもを大切にする」という日本人の「子宝思想」が外国人に受け入れられたからではないかと思います。ご存じない方に説明すると、公文式は子どもの才能を最大限伸ばすために、プリントを使った自習を基本とします。教室の先生は自習をしている生徒を見守り、モチベーションを高める役割を担っています。それは日本の寺子屋が発祥であり、子どもを見守る先生は日本の母親の投影であるとも言えます。単純と言えば単純ですし、日本ではどうってことのないことかも知れませんが、それが海外では驚きを持って受け入れられ、日本以上に広がっているのです。
戦後の高度経済成長と失われた20年の中で、ともすれば日本人は自信を失っているかに見えます。特に低成長や少子高齢化、その一方で新興国の急成長や欧米発の革新的なサービスが広がる中で我々の感覚は麻痺し、焦りというか、あきらめにも似た状況が存在するのかもしれません。しかし世界中を見て回った身からすれば、実は「日本発」が世界のためになると感じます。激動の時代に入った今年こそ「日本発」のイノベーションを目指すべきと考えるのです。
今年の干支は十干も含めて言うと「丁酉(ていゆう・ひのととり)」という年。安岡正篤の「干支の活学」をひもときますと、この干支は「革命の起きやすい年」ということが書かれています。我々はこの革命という言葉を「イノベーション」という言葉に置き換えて新たな「日本発」のイノベーションを自らの手で起こし、日本が復活していく年にしていこうではありませんか。
皆様、今年一年、是非良い年にしていきましょう。
公文教育研究会
情報システム部 部長
鈴木 康宏
※CIO賢人倶楽部が2017年1月1日に掲載した内容を転載しています。
CIO賢人倶楽部について
大手企業のCIOが参加するコミュニティ。IT投資の考え方やCEOを初めとするステークホルダーとのコミュニケーションのあり方、情報システム戦略、ITスタッフの育成、ベンダーリレーションなどを本音ベースで議論している。
経営コンサルティング会社のKPMGコンサルティングが運営・事務局を務める。一部上場企業を中心とした300社以上の顧客を擁する同社は、グローバル経営管理、コストマネジメント、成長戦略、業務改革、ITマネジメントなど600件以上のプロジェクト実績を有している。
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