「竹取物語」が教えてくれる、DXにおけるIT部門のあるべき姿とは?
2025年2月20日(木)CIO賢人倶楽部
「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、J.フロント リテイリング 執行役 デジタル戦略統括部グループシステム推進部長兼チーフデジタルデザイナー 野村泰一氏からのオピニオンである。

平安時代の有名な作品とされる『竹取物語』(作者不詳)。主人公であるかぐや姫には5人の求婚者が現れます。かぐや姫は彼らに「私の望むものを手に入れた方と結婚します」と、無理難題を伝えます。その5人の取った行動パターンに注目してみたいと思います。
1人目は石作御子(いしつくりのみこ)です。彼は『仏の御石の鉢』を持ってきて、と言われます。仏の御石の鉢はお釈迦様が使っていた石の食器であり、光を放ちます。御子は天竺まで行かず、大和の山寺にあった普通の石鉢を持ってきます。本物ではないので、光を放たず偽物とバレてしまいます。
2人目は右大臣阿部御主人(あべのみむらじ)。彼が注文されたのは『火鼠の皮衣』。火鼠とは中国の妖怪で、その皮で作られた燃えない衣ですが、目の前で燃やされてしまって偽物だと発覚してしまいます。
石作御子と阿部御主人、2人の行動は似ています。見た目が近い偽物を持ってきて、品質の違いを指摘されてしまうというケースです。
3人目は大納言大伴御行(おおとものみゆき)です。彼は『龍の首の玉』を注文され、家来に加えて自らも探索します。しかし船が難破し、病で寝込んでしまうのでした。
4人目は中納言石上麻呂(いそかみのまろ)です。彼は『ツバメの子安貝』を探すよう言われ、自ら木に登り落下して大けがを負います。
大伴御行と石上麻呂の共通点は、勝算のない課題に対して正面から挑んで砕け散ったことです。自ら行動を起こしたという部分は評価できますが、あまりに無謀で、失敗に終わってしまいます。
最後は、倉持皇子(くらもちのみこ)です。彼は『蓬莱の玉の枝』を注文されます。それは根が白銀、茎が黄金、実が真珠という世にも珍しい植物です。彼はその植物と全く同じものを職人たちに作らせ、自分が取ってきたように振る舞いました。出来映えは素晴らしいものだったのですが、職人が「製造代金を払え」と現れ、ウソがばれてしまうのでした。

●Next:かぐや姫のように無理難題を出されたら……
会員登録(無料)が必要です
- 1
- 2
- 次へ >
- 業務とITの橋渡しを担う「BA=ビジネスアナリスト」の必要性(2025/01/09)
- 生成AI活用で米国の後塵を拝する日本、挽回策はあるか?(2024/12/18)
- 情報システム紛争を回避するための「もめないコミュニケーション」(2024/11/20)
- デジタル化の光と影、高齢者を置き去りにしてはいけない(2024/10/09)
- 本来の生産性向上のために「無駄」を活かす(2024/09/13)